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2024.06.21

連載

「吸着ハンドは難しい」。だからこそ、部品メーカーの次の一手/日本ピスコ

空圧機器メーカーの日本ピスコ(長野県岡谷市、河西利行社長)は昨年8月、「ロボットハンドユニット設計サービス」を始めた。顧客の要望に合わせて、ロボットハンドを設計し、一体のユニットにして提供する。すでに、段ボール箱の組み立て用のロボットハンドを製作するなどの実績もある。部品メーカーのイメージが強い同社が、このようなユニット設計から手掛けるサービスを始めた狙いとは。

新サービスの内容

 日本ピスコは昨年8月、「ロボットハンドユニット設計サービス」を始めた。

 エンドユーザーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の要望に合わせて、特定の用途向けのロボットハンドを製作する。
 同社製品を中心に、他社の部品や個別に製作した機構などを組み合わせて、要望に合うロボットハンドに仕立てる。ロボットハンドまで伸びるエア配管や電気配線なども一式で提案する。
 実際の対象物(ワーク)を使ったハンドリングテストなどを通じて、アプリケーションとして完成するまで顧客と共に試行錯誤する。すでに、実績も出始めている。

ロボットで段ボール箱を組み立てる

「段ボール組立真空グリッパ」を使った組み立て作業の様子(提供)

 例えば、「段ボール組立真空グリッパ」を製作した。
 折りたたまれて平積みされている段ボール箱を持ち上げて、箱型に組み立てる。

 まず、段ボール箱を持ち上げた後、ロボットハンドに搭載された機構で側面を折り曲げて筒状にする。その後、製作した手すり状のサポート器具に段ボール箱を押し当てて、底面を閉める。

「段ボール組立真空グリッパ」と小宮裕係長

 ロボットハンドは同社の「真空グリッパVMG」をベースとし、その側面に段ボール箱を折り曲げるための機構などを設けた。その機構はエアシリンダーで稼働する。
 依頼を受けてからハンドを構成する骨格などを設計し、部品も調達して、2カ月ほどで完成させた。

 今回の設計サービスの開始に合わせて営業本部にロボットハンドソリューションチームを新設した。
 同チームの小宮裕係長は「箱を組み立てる専用機などもあるが、ロボットだけで組み立てたいとの要望があった。具体的な用途向けのハンドを構築でき、最初の事例として良い経験になったし、対外的にもアピールしやすい」と話す。
 今後は、段ボール箱に封をする封かん機メーカーとの連携も検討している。

製作した電動リフターの吸着部

 他にも、助力装置である電動リフターの先端に使う、吸着式のつり具を製作した。
 リフターは、重たいワークを搬送する際に、持ち上げる力を補助するもの。クレーンのように稼働する。人がワークの近くを直接持って動かして、搬送の方向や位置決めをする。

 そこで、ハンドルを持ちやすく、昇降の操作を手元でできるなど扱いやすい吸着式のつり具を製作してほしいとの依頼に応えた。

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