生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.06.19

連載

[SIerを訪ねてvol.35]ワークストッカーの設計で、工作機械向けのビジネスを強化/ミルデザイン

引き出しの多さが分かれ目

ワークストッカーの設計イメージ(提供)

 経験値の高さ――。
 竹井社長は自社の強みをそう分析する。「例えば『シリンダー』と言われた時に、どれだけ多くのメーカーの存在や製品の一長一短を過去の業務経験から思い起こせるか。専用装置やロボットシステムの設計では、こうした引き出しの多さが勝負の分かれ目になる」と述べる。

 現在、その“経験値”の獲得に特に注力している分野が工作機械用のワークストッカーの設計、製作だ。ある工作機械メーカーからの仕事を16年に引き受けたのを機に、工作機械業界向けのビジネスを強化している。
 工作機械に付帯する自動化システムには、多関節ロボットやロボットハンドだけではなく、加工前の素材や加工後のワークを収納するストッカーが欠かせない。近年はロボットやワークストッカーをセットにした自動化システムの開発に取り組む工作機械メーカーも増えており、同社はワークストッカーの領域でメーカー各社に協力している。既に複数のメーカーと取引しており、各社の製品に合ったワークストッカーの設計、製作を手掛けた実績もある。

 「工作機械や切削加工に関する知識がほとんどなく、仕事を初めて受けた時は工作機械業界の常識を理解するのが大変だった。だが、フットワークの軽さや小回りの良さを生かして工作機械メーカーの設計者と交流を深め、徐々に知識を身に付けると同時に信頼関係も築いてきた」と竹井社長は語る。

将来は自社ブランドも

長野県茅野市にあるミルデザインの本社工場(提供)

 竹井社長はもともと別のFA装置メーカーで設計や組み立てを担当しており、30歳の時に独立してミルデザインを設立した。

 設立当初は機械設計がメインだったが、前職の従業員らが仲間に加わったことで技術の幅も広がり、16年には専用装置やロボットシステムの設計から立ち上げまで一貫して対応できる体制となった。
 その後、19年には現住所に本社工場を竣(しゅん)工した他、20年には消費者向けのビジネスにも乗り出して業容をさらに拡大した。

 「今年で設立10周年を迎えるが、一番のターニングポイントは工作機械関連のビジネスを始めた16年」と竹井社長は話す。

「一番のターニングポイントは16年」と話す竹井豪社長

 今後も工作機械メーカーなどの顧客の要望に沿った専用装置やロボットシステム、ワークストッカーを手掛けて技術力を磨くと同時に、将来的には自社ブランドのワークストッカーの開発も視野に入れているという。

 「工作機械ユーザーによって対象ワークの形状やストック数が違うため、ワークストッカーの設計は基本的に特注が多く、パッケージ化するのが難しい。だが、わが社のこれまでの業務経験やロボットSIerとしてのノウハウを生かし、汎用性が高くロボットとも相性が良いワークストッカーを自社開発したい」と竹井社長は意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

TOP