[ショールーム探訪vol.16]成長する「ロボの目」の礎を築く/東京エレクトロンデバイス「ロボットセンター」
「強みはロボット技術ではない」
SIer向けの販売では、同社が高精度なビジョン機器と画像処理・AI機能を組み合わせて一体のビジョンシステムとしてSIerに提供。エンドユーザーの作業内容に合わせて、SIerが処理内容を簡単に素早く選べるようにする。
さらに、ビジョンシステムやロボットシステム、搬送機器の連携動作の設定や変更を簡単にする独自のオペレーションシステムを専用のPLCに搭載する。周辺機器を接続するインターフェースや操作モニターなど含めた専用の制御盤として提供する。そうすることで、SIerがビジョンシステムとPLCを簡単に扱える。
ビジョンシステム以外のロボットシステムはSIerの作業領域と考え、SIerに任せる。
神本本部長は「ビジョンや統合制御面はわが社の得意領域。ロボット技術はSIerが大きな強みを持っている。そこでロボットシステムの構築に技術や知見があるSIerが使いやすいビジョンオートメーションシステムを目指す。これにより、SIerがロボットシステムや周辺機器の製作に集中することで、より優れた自動化システムを構築できる」と見込む。
そういった役割分担の中では、SIerが担当するロボットシステムと同社が担当するビジョンシステムやPLCの連携が簡単になるほど、SIerの負担が減る。
TRCでは今まさに、その境界面のインターフェースや扱いやすい操作画面の開発に注力している。さらにビジョンシステムに人工知能(AI)を使って、生産現場で作業品質の改善や対象物の追加に即座に対応できる仕組みを開発している。
これを実現すると、生産現場の作業者でだけで現場の作業変更に対応できるため、SIerが担当してきたシステム変更やメンテナンス作業の量も減らせる。
例えば、AIを使えば、作業を繰り返す過程で、対象物の画像と作業結果を学習し、より正確に認識できるようになる。すると、その後のロボットを使った把持作業では、対象物を落とす可能性が下がる。
また、把持する対象物を増やす際にも、何度か形状を学習させれば対応できる。これもまた、作業を繰り返すうちに、作業品質が上がる。
さらに学習を重ねれば、外観検査などにも使える学習データにもなりうる。一度運用を始めたシステムが、こういった循環を描くシステムを理想に掲げる。これが「成長型」とした理由だ。
神本本部長は「SIerからの期待は大きく、技術要求のレベルは高い。サービスを本格展開する当初からその要求に応えられなければ、悪評が先行して事業はうまく進まない。あと半年ほどをかけて慎重に方向性を決めながら、技術開発を進める。1年以内には本格化を目指す」と意気込む。
TRCで基礎固め
自動仕上げ加工機の稼働の様子。無造作に置いた板金にも対応する
TRCでは、画像処理技術を高め、ピッキング以外の作業に適用する技術開発を進めている。その1つが、レーザー加工時にできる加工部周辺の鋭利な端面(ピン角)を除去する「自動仕上げ加工機(面取り・バリ取り機)」だ。
このシステムは、レーザー加工で切断された後の板金に対し、加工部の縁を回転工具で面取りする。
まずカメラの撮像範囲内に対象物を置くと、レーザースキャンにより外形や板厚を3次元計測する。次に、直交ロボットを使い、外形と厚さに合わせて、自動でならい加工をする。直径(Φ)6mm以下の穴に対しては、ねじ止めをしやすくするため端面に傾斜を付ける「皿もみ加工」もできる。加工後、除去した切りくずを吸引する。
最初に画像で対象物を認識して、加工する軌道を決めるため、ロボットのティーチングが不要で板金を置く際に位置を正確に置く必要もない。直交ロボットに対して、斜めに板金を置いても対応できる。
外形の縁をなぞるような作業は面取りやバリ取り以外にも多く、適用範囲が広い。SIerからの幅広い要望に応えられるよう、さまざまな画像認識の方法の知見を積んでいる。
神本本部長は「新たな名称に付けた『成長型』には、現場で作業品質を改善できる(=現場で成長させられる)点に加えて、提供しながらこのシステムを常に進化させ続けるとの思いも込めた。パートナーであるSIerが使いやすく、生産現場のエンドユーザーに負担をかけないシステムをTRCから開発する。是非、この場で実機を見てもらい、積極的に議論を交わしたい」と話す。
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)
[取材記者から]
ロボットセンターは東海道新幹線やJR、東急、相鉄線が乗り入れる新横浜駅からバスやタクシーで10分ほどの立地にある。全国からアクセスしやすい立地だろう。得意な仕事を分担することで、より良いシステム開発を実現する。そのために、礎となるビジョンシステムとPLCの開発と改善を進めている。そんな熱量も含めて、刺激になる場所だった。
施設概要
名称:東京エレクトロンデバイス「ロボットセンター」
所在地:横浜市都筑区東方町17
予約連絡先:(TEL)045-443-4543
問い合わせフォーム:https://www.inrevium.com/inquiry/
※要予約
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