[ロボットが活躍する現場 vol.35]3つの要素で実現した研磨の自動化/RK
研磨の自動化の難しさ
研磨加工は、金属製品の仕上げ工程にあたる。表面に光沢を出すなど、要求される加工品質の水準が高いこともあり、一般的に研磨加工の自動化は難しいとされる。
例えば、ロボットハンドで把持した跡を製品に残せないため、研磨機に押し当てても当たり負けないように強く固定するのが難しい。不完全な固定やロボットの軌道精度の悪さ、動作プログラムの不備などでワークを押し当てる角度がずれれば、余計な傷の原因になる。
そのため、自動化が難しく、豊富な経験を持つ職人頼みの生産現場が今でも多い。
同社の社員の平均年齢は30代と若いが、業界全体では職人の高齢化が進むのも共通の課題だ。
研磨時の加工音が大きく、粉じんが生じて、回転式の研磨機に手指を巻き込まれる危険もある。きつい、汚い、危険のいわゆる「3K」の仕事のため、業界全体としては若い人材が入りにくい。人手不足で廃業する同業者も少なくないという。
新潟県の燕市や三条市は、食器や調理器具を中心に金属製品の産地として国内外で名高い。しかし、その燕三条地域でも研磨加工業はこの30年ほどで9割以上が廃業した。数十社だけが残る。
全国でも同様の状況で、減少傾向が続く。反対に、現存する企業の仕事量は手が回らないほどに増えているという。
小林社長は「若手の人材不足と現存企業の仕事の多さ。いずれにしても、自動化は避けられない。技術や知見を持つ職人が現役のうちに研磨加工の自動化を進めなければ、業界が立ち行かなくなる」と危機感を口にする。
そこで、4年前から各種補助金などを使い、ロボットを使った研磨加工の自動化に取り組み始めた。
KUKAを愛用のワケ
同社では、ドイツに本社を置くKUKA(クカ、日本法人=横浜市保土ヶ谷区、石丸広典社長)のロボットを愛用する。
KUKAのロボットは、剛性や軌道精度が高いという。研磨加工では、ロボットがワークを研磨機に押し当てて磨く。そのため、押し当てた際にアームが振れない剛性や、滑らかに動く軌道精度などがワークの仕上がりの品質に直結する。
研磨加工の難しさを知る地元の機械商社、昭栄産業(新潟市中央区、平沢修一郎社長)の担当者は、研磨加工とKUKAのロボットとの相性の良さを感じていたという。
そこで、昭栄産業はKUKAのロボットの取り扱いを得意とするシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のインフィニティソリューションズ(長野県上田市、小山田聡社長)をRKに紹介した。そこから、三者で具体的な検討を始め、3年前に初めて導入した。
小林社長は「他社のロボットも使ったが、カクカクと点で動いている印象で、細かい研磨加工には使えなかった。KUKAのロボットは機械性能が高く研磨に適していると感じた」と振り返る。そこからは、KUKAのロボットを愛用している。