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2019.04.09

イベント

研削・研磨で広がるロボ活用/グラインディング・テクノロジー・ジャパン2019

ロボットなどを使った自動化のニーズは、研削・研磨の業界でも広がりを見せる。3月18日~20日の3日間、千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた研削加工技術の専門展「グラインディング・テクノロジー・ジャパン2019」でも、ロボットを活用した提案があった。研削・研磨加工は切削加工と比べて自動化やロボットの利用が進んでいないとされるが、ドリルなどの刃物を製造する工具研削などの分野ではロボット活用の提案が活発化していることがうかがえた。

汎用性で目を引く

2台の小型ロボットが同期するバリ取りロボットシステム(旭商工社)

 グラインディング・テクノロジー・ジャパン2019は、砥石(といし)で金属を加工する研削技術の専門展だ。
 研削は仕上げ工程に多く使われる加工法で、高い精度が求められる。また、砥石は使ううちに減耗して寸法が変わるため、減耗分を考慮して補正しながら加工する必要がある。金属加工の中ではまだまだ職人芸が残る分野で、自動化があまり進んでいなかった。
 しかし会場では、近年の人手不足を商機ととらえ、ロボットを使った自動化を積極的に提案する企業があった。

 機械工具商社の旭商工社(横浜市西区、野村満輝社長)は、ロボットの汎用性の高さをアピールした。不二越の小型ロボット「MZ07」2台を向かい合わせで設置し、一方には加工対象物(ワーク)を、もう一方にはバリ取りツールを持たせ、2台が同期してバリ取りを行うロボットシステムを構築した。バリとは、加工時に製品の縁にできる不要な突起のこと。従来は人がやすりで除去することが多かったが、付加価値を生む作業ではないため自動化が求められていた。

 担当者は「必要ない動きも『見栄え』のために盛り込んだ。ロボットの特徴である汎用性の高さを見てもらえるよう、大げさな動きなどを増やし、来場者の目を引くようにした」と話す。実際に、ロボットシステムが動き始めると、近くにいる来場者たちが引き寄せられて集まった。ロボット専門展ではない、研削・研磨の専門展示会でも、自動化やロボット活用はそれだけで来場者の強い興味の対象となるようだ。

機内にロボ搭載

ワーク搬送用ロボットを搭載する全自動工具研削盤「TGR-016Hi MODEL-Ⅰ」(宇都宮製作所)

 研削加工で製造する製品の一つに、切削工具がある。工作機械に取り付けて使用する、ドリルなどの刃物だ。同展では切削工具を作るための工具研削盤の展示も多く、自動化の提案もあった。

 工具研削盤メーカーの宇都宮製作所(東京都品川区、宇都宮周太郎社長)は、ワーク搬送用ロボットを搭載する全自動工具研削盤「TGR-016Hi MODEL(モデル)-Ⅰ」を出展した。ファナック製の天つり型ロボットを採用して省スペース化を徹底。横置きパレット方式で、さまざまなサイズの30本のワークをストックできる。
 標準搭載する対話型の研削プログラムソフトウエア「ITPS」は、ドリルなどの刃先部分を研磨する「ホーニング加工」に対応し、担当者は「競合他社にはないオンリーワンのソフト」と話す。5年前に開発して以来、品質の安定に貢献し、技能者がしていた仕事を機械に負わせることで省人化が図れるメリットが顧客から支持されており、今後も拡販につなげるという。

ワーク搬送用ロボットを搭載したオーストラリアのアンカの小径切削工具向け工具研削盤「FX7リニア」(シーケービー)

 輸入機械商社のシーケービー(東京都渋谷区、中川貴夫社長)は、オーストラリアのアンカの小径切削工具向けの工具研削盤「FX7リニア」を披露した。オプションで機内にロボットローダーや簡易ローダーを搭載でき、ストッカーには最大で840本のワークを収納できる。
 機内のロボットはワークと砥石の両方を自動で交換可能で、担当者は「(1台で両方できる)汎用性はロボットならでは」と自信を見せる。狭い機内でロボットが動く経路も無駄がなく計算され尽している。設置面積が小さく、省スペースが評価される日本市場に適した製品だ。
 また、加工中の切削工具の測定と補正ができる非接触式の計測装置「レーザープラス」や、砥石(といし)の自動測定が可能な砥石プローブなどもオプションで搭載できる。

パッケージ提案も魅力

パラレルリンクロボットを機内に搭載した韓国のAMテクノロジーの全自動上下面研削盤「ADG-500F」(ユーロテクノ)

 輸入機械商社のユーロテクノ(東京都杉並区、小原修社長)は韓国のAMテクノロジーの全自動上下面研削盤「ADG-500F」を出展。
 刃先交換式切削工具の刃先チップなどを加工するもので、超硬合金や立方晶窒化ホウ素(CBN)、サーメットと呼ばれる複合材料など、さまざまな材質の刃先チップの上下面を同時に研削できる。ファナック製のパラレルリンクロボットや20段のパレットを組み込み、全自動システムにして披露した。
 充実した機能を備えながらも日本製品より安価であることだけでなく、工場レイアウトに合わせて柔軟なシステム構成にできることなどもアピールした。

ツォラージャパンはロボットを搭載したハイエンドな自動化システム「ロボセット2」を展示

 切削工具の測定機などを開発、製造するドイツのツォラーの日本法人ツォラージャパン(大阪府吹田市、龍口一社長)は、ロボットを搭載したハイエンド自動化システム「ロボセット2」を展示した。工具測定機と接続して使い、24時間休むことなく自動で工具測定器に切削工具を供給し続けることができる。担当者は「全数検査や記録管理が必要な切削工具メーカーに最適」と話す。
 また、超音波クリーニング機能の「ロボクリーン」により切削工具のクリーニング工程を、レーザーマーキング機能の「ロボマーク」によりマーキング工程をそれぞれ全自動でできる。落ち着いた黒基調のカラーリングと丸みを帯びたカバーデザインも印象的だ。


 自動化が遅れていると言われる研削・研磨の工程でも、今後ロボットの導入が進む可能性はある。現在はワーク供給など特定の作業を担うロボットシステムの提案が多いが、それだけでなく複数の役割をこなせるロボットの汎用性の高さを生かした自動化を進めることも、今後は重要になりそうだ。

(ロボットダイジェスト編集部 芳賀崇)



※自動化提案以外も含めた「グラインディング・テクノロジー・ジャパン2019」の全容については、「月刊生産財マーケティング5月号」でも詳しくお伝えします。

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