[SIerを訪ねてvol.11] 作業者の立場から生まれる自動車向けロボットシステムを【後編】/アスカ
女性が活躍、ロボット講座
溶接や搬送、組み立て、検査の自動化システムを提供するアスカは、「サービスエンジニアリング課」を昨年新設した。ロボットを使う顧客へのサービス強化を図るためだ。その一環で「アスカロボットアカデミー」という取り組みも始めた。
ロボットを操作する作業者は、産業用ロボットに動作を記憶させるティーチングなどに関して安全教育を受ける必要がある。アスカの同アカデミーでは、学科と実技の両方から安全教育を実施。受講者に特別教育修了証を発行する。4、5月には新人の講習として活用され、19年度は400人ほどが受講した。
アカデミーの講師は3人で、その全てが女性従業員だ。「女性がロボットを操作する姿は珍しいので目を引く上、男性よりも女性の声の方が聞いてもらいやすい」と、女性を登用した理由について福西健哲営業課長は説明する。
スムーズなアフターサービスを
新設されたサービスエンジニアリング課は、ロボットアカデミーの他に、ロボット本体を使わずコンピューター上でティーチング作業をする「オフラインティーチング」の強化にも取り組む。
「今までも遠方や海外のお客さま向けにオフラインティーチングを活用してきたが、今後は標準にしたい」(福西課長)。
一般的なティーチング作業は実際のロボットを動かしながら動作を覚えさせるため、現場に行って作業しなければならない。同社拠点の周辺企業の場合はすぐに赴けるが、遠方、特に海外の工場ではそうはいかない。オフラインティーチングのデータを遠方の工場に送れれば、動作プログラムの変更にかかる時間を短縮できる。また作業者が現地に行くとしても、オフラインティーチングをしておけば現場でティーチング作業をする必要はないため、ロボットシステムの変更や調整だけに時間を割ける。つまり、スムーズなアフターサービスを提供でき、顧客にストレスなく設備を使ってもらえる。
「これからさらにサービス体制の充実が求められる。サービスエンジニアリング課はそうした要望を応えるための重要な課になる」と福西課長は強調する。
ハンドも含めた協働ロボの運用
アスカが協働ロボットを使う自動化システムに取り組み始めたのは2年前から。「一般的な産業用ロボットと協働ロボットは全くの別物だった」とシステムを担当する西田光宏機械設計課長は振り返る。
「産業用ロボットは柵で囲って『人に当たらない』、もしくはセンサーなどを使って人の接近時に『いかに止まるか』を前提に作られるが、協働ロボットは人に当たっても大丈夫なことが前提。根本的な考え方が違うので、システムの組み方も変わってくる」という。
協働ロボットのアームは、人に当たった時は即座に止まり、柔らかいカバーに包まれた製品などもあり、当たっても大丈夫なように最初から設計される。しかし、アームではなく、先端のハンドや、そのハンドが運ぶ部品が人にぶつかる場合もある。
ハンドは協働ロボットシステム専用ではないため、人に当たらないことを前提に作られている。また運ばれる部品には重量物もある。そうした部分も含めた安全面を考慮してシステムを組む必要があるため、協働ロボットの導入には、一般的な産業用ロボット以上に顧客との打ち合わせが必要になる。
「導入を検討されても『万が一』のことを心配されて断念する企業もある」と福西課長は課題を話す。