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2020.08.19

軟らかいものをどうつかむ? ~ソフトハンド開発動向【前編】

産業用ロボットがさまざまな業界に普及し、金属やプラスチックのような固いものだけでなく、軟らかいものをハンドリングするニーズが高まっている。その代表例が食品加工や物流業界だ。食品や、袋で包装された物は強くつかむとつぶれやすく、形が一定ではないものが多い。そういった物を柔らかくつかむソフトハンドの開発は技術的なハードルが高いが、多くの企業が開発や販売に取り組んでおり、実用的な製品も出始めた。

世界4大メーカーの一つ、ファナックが採用

軟らかい物や不定形の物を自在につかむ

 米国のベンチャー企業であるソフトロボティクスが開発したソフトハンド「mGrip(エムグリップ)」は、グリップ性が高く洗浄しやすいのが特徴。
 食品の安全性を保証する米国食品医薬品局(FDA)規格、欧州のEC1935/2004規格の認可を取得。日本でも食品衛生法の認可を得ており、食品業界でも安心して導入できる。産業用ロボットの世界的大手メーカーであるファナックも自社製ロボットの周辺機器オプションとして採用している。

 衛生や安全を考慮してエア駆動を採用。専用のコントローラーを使い、つかむ力を細かく調整できるので、パンのような軟らかい食品でも問題なくハンドリングできる。
 指の本数は2本や4本、5本、6本タイプがあり、平行に2本ずつ並べたり、全て中央に向けて並べることもできる。指の本数や設定によるが、1~2kgの物をつかめる。

国内ではニッタが自社開発

つかむ物に合わせた3つのバリエーションを用意

 国内企業では、産業機械などのゴムや樹脂製品を手掛けるニッタが、ソフトハンド「SOFTmatics(ソフマティックス)」を開発し、昨年3月に発売した。弾力の高いエラストラマー樹脂を使っており、食品などを優しくつかむ。この樹脂は食品衛生法に適合する。

 食品などつかむ物に合わせて3種類のグリッパー形状をラインアップする。細長い物をはさむ2本指、細い指で小さな物をつまむ3本指、不定形の物を包むようにつかむ5本指の3種類だ。
 ロボットとの接続部は軽量なアルミでできており、総重量が1kgを切るタイプもある。ソフトロボティクスのエムグリップ同様、エアの圧力で開閉動作をする。可搬質量は最も大きい5本指タイプで約4.6kgとなる。

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