[SIerを訪ねてvol.19]「研削盤SIer」を本格化/技研
業界初? 研削盤SIerの外販開始
「『研削盤SIer』なんて、業界初ではないか」と小清水司社長は笑う。
技研のメインの事業は、研削盤を中心とする工作機械のレトロフィット(コンピューターによる数値制御化など、旧式の機械の改造)だ。
1975年に岡本工作機械製作所のサービス部門が分離・独立して、当時は岡本技研サービスの社名で発足。岡本工作機械グループの関連会社の吸収などを経て業容を拡大してきた。
現在はサービス部門が岡本工作機械に再び集約されたため、使い込んだ研削盤のオーバーホール(精度復元や修理)やレトロフィット、相手先ブランドでの製造(OEM)、専用研削盤の製造などを担う。
4年前からは工作機械の製造やレトロフィットなどで培った高い技術力を生かし、SIer業務も始めた。これまでは主に、グループ会社で歯車や受注生産の工作機械を製造する岡本工機(関連記事=「ロボットが活躍する現場vol.7」)の現場で、経験と実績を積んだ。
岡本工作機械の研削盤を数多く扱い、SIer事業として自動化やロボットシステム化の経験も積んだ。ロボットシステムの設計力にも磨きがかかり、SIer事業を外販する準備が整ったといえる。そこでSIer事業の外販を本格的に開始することになり、冒頭の小清水社長の話につながる。今後はSIer事業の中核となる設計部門の人員を拡充する構えだ。
時代とかみ合うビジネス
「製造現場の自動化は急速に進み、『レトロフィットの際に自動化も』とのニーズは高まり、引き合いも増えている。持続可能な開発目標(SDGs)への意識の高まりなどを背景に、時代とわれわれのビジネスがうまくかみ合ってきた感覚もある」と小清水社長は話す。
SIer事業では特に、顧客との綿密な打ち合わせが必須だ。被加工物(ワーク)を出し入れする場所や位置、つかみ方など、その現場ごとに合わせたシステムを作り込む。「それがないと手戻りが発生し、稼働までに時間もかかる」(小清水社長)。
ワークにより要件がさまざまに異なるロボットハンドも、自社で最適なものを設計、製造して提供できる。ロボットを活用した研削盤のシステム化は、自社工場で立ち上げし、最後は顧客先でセットアップする。
今後外販を本格化する上では、これまでのグループ企業を相手とした仕事の進め方ではなく、よりシビアな打ち合わせなどが必要になる。また「これまではファナック製ロボットの使用が多かったが、今後はより多くのメーカー製のロボットを扱うことになる。設計陣は経験が豊富で、対応力には自信がある」と小清水社長は意気込む。