溶接ロボが狙う次の展開/2022国際ウエルディングショー
2年に1度、東京と大阪で
国際ウエルディングショーは2年に1度、東京と大阪で交互に開催される。今回が26回目で、東京では4年ぶりとなる。展示面積は過去最大で、前回の東京開催時よりも35%増加した。
今回のテーマは「日本から世界へ 溶接・接合、切断のDX革命-製造プロセスイノベーションの到来」。電気自動車(EV)の開発に向けた軽量化素材に対応するレーザー溶接など、製造業の動向を先取る提案や、デジタルトランスフォーメーション(DX=デジタル技術による変革)などが見どころという。
溶接業界は大手製造業を中心に、早くから自動化が進んできた。そういった企業向けではIoTやAIを使った品質管理や品質保証がトレンドだ。
一方、中小企業では多品種少量生産の生産現場が多く、人手に頼る溶接作業がまだまだ大半。そんな現場でも深刻な人手不足で技能継承の難しさに直面する。産業用ロボットへの関心が高まるが、扱いに慣れていない面もある。そこで、初心者でも扱いやすいシステムや製品の展示も注目を集めた。
AIで品質を診断
安川電機はアルミニウムの高品質な溶接と溶接中の診断機能を提案した。放電現象の一種を使ったアーク溶接で、難易度の高いアルミを高速かつ高品質に溶接する。作業中のアーク放電の電流値やガスの噴出量などを検知して、適切に溶接が施されたかをAIが診断する。
診断できる不良内容は、溶接個所が狙いからずれた「狙いずれ」や不活性ガスが不足した「ガス不足」、供給するアルミが不足した「架橋不足」など多岐に渡る。
担当者は「AIを使って、溶接中に不良を見抜ければ、後工程の検査などの負担が減る。それだけでなく、不良の発生条件のデータが蓄積されると、そもそも不良を生まない作業工程の立案などもできる」と話す。
アマダは子会社のアマダウエルドテック(神奈川県伊勢原市、辻岡寿康社長)とアマダAIイノベーション研究所(東京都千代田区、鹿志村洋次社長)が開発したレーザ溶接AIシステム「WELDXAI(ウエルデックスアイ)」を提案した。
レーザー溶接を対象に、素材(ワーク)や溶接条件から、溶接後の引っ張り強度などをAIが予測する。溶接に使うレーザーの出力や可視光を見るカメラ、放射熱を測る温度計などを駆使して、溶接条件を見極めて引っ張り強度を推論する。
来年1月をめどに、それら技術を詰め込んだモニター用コンピューター機器「MM-L400A」を発売予定。アマダウエルドテックはAI技術のコンサルティングなどにも応じる。
また、ワークを設計するCADデータから稼働プログラムを自動生成できる溶接ロボット「FLW-ENSIS(エンシス)6kW」と人手作業のコラボレーションも提案した。人手でパーツの要所だけを仮止めで溶接し、ロボットが残りの全体を溶接する。
担当者は「ロボットは長い距離を溶接するのが得意。人手と得意な作業を分け合うと、生産効率をさらに上げられる」と話す。