【新春特別インタビュー】ロボット市場は次のステージへ 本気で未自動化領域に挑む/安川電機 小川昌寛社長
中長期では悲観的材料なし
――ずばり、2024年をどう見通しますか。
23年の需要は横ばいで、受注残をこなすことで売り上げが伸びました。なぜ横ばいだったかを考えると、今年のことが少し見えてくるかもしれません。つまり、半導体市場と中国市場の低迷です。中長期的に見ればそれほど悪い状況ではなく、悲観的になる要素はありません。
――半導体市場の動向は。
半導体市場が再び成長し始める時、中身が変わるでしょう。先端半導体の開発や量産が市場をけん引すると思われますが、当面は従来の半導体の需要も残り、市場の中でのポートフォリオの厚みが増すからです。先端半導体はチップの組み立て工程も変わり、合わせて設備も変わるでしょう。成長ムーブが始まれば大きな波になると予測されていますが、タイミングが非常に読みづらいのが難点です。
――中国市場はどうでしょうか。
中国市場は需要を伴った質的な回復が待たれます。金融市場の引き締めが厳しくなり、今までのような大規模な投資とボリュームの成長はないと考えています。一方、大手企業は大きく成長してグローバル企業となり、骨太感が出てきました。
未自動化領域を開拓
――昨年12月に満を持して「モートマンネクスト」を発売しました。
今まで自動化できていなかった領域に本気で取り組むとの意思表示です。多くの作業が今まで自動化できなかった理由は、ロボットには人のような対応力がなかったからです。人ならば経験知や暗黙知として持っている寛容さが、ロボットにはありませんでした。順調に動いている間は人よりもロボットの方が優秀ですが、ひとたびあいまいな状態や異常が発生すると「正常に」ストップするのが従来のロボット。しかし、生産性の観点からは、ストップは避けなければなりません。モートマンネクストは環境の変化を受け入れて自律的に適応し、作業を完結させることに重きを置いています。街中では、毎回信号に引っかかるスポーツカーよりも自転車の方が早い場合があるのと同じです。
――自律的に適応するメリットとは。
第一に、ラインがストップしないことでダウンタイムが少なくなり、稼働時間の平均が上がります。それが常態化すれば、トータルで生産性は向上します。付加価値としてトレーサビリティー(追跡可能性)が向上し、品質が安定し、生産計画を立てやすくなるのでロスも削減できます。ロスの削減は、材料費や生産設備の消費エネルギーなどの削減を意味します。すると、生産増と二酸化炭素排出量の削減を両立できる可能性も出てきます。さらに言えば、自律的な対応ができなければ、人の作業の置き換えができないので、ロボットはこれ以上普及しないでしょう。