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2023.04.12

[ショールーム探訪vol.13]実見し、触れて、楽しめる場所/テックシェア「開発センター」

TechShare(テックシェア、東京都江東区、重光貴明社長)は、ロボット事業として中国DOBOT(ドゥーボット)製ロボットの販売などを手掛ける。需要が順調に伸びつつ、新型コロナウイルス禍中の新製品リリースで「見せ方」に悩み、ショールーム兼デモスタジオの「開発センター」を本社近くに開設した。DOBOTの教育用デスクトップ型ロボットや協働ロボットの動きなどを実際に見て、触れることができる。またアプリケーション(応用技術)開発の場でもあるため、開発センターを訪れれば他にも四足歩行ロボットや無人搬送車(AGV)などの動きも体感でき、楽しめるに違いない。

デモスタジオ兼ねる

DOBOTの協働ロボットは非接触検知という独自の安全機能を持つ

 「開発センターはデモスタジオを兼ねていて、オープンキッチンのレストランのようなもの。製品をより良く使うための作り込みを見せる場でもある」と話すのは、重光社長だ。
 テックシェアは2012年設立。英国で開発されたラズベリーパイのような、シングルボードのコンピューターでのシミュレーションなどの制御教育を祖業とし、プログラミングの基礎教育などを含む教育事業をメインにしていた。
 
 ロボット製品のショールームである開発センターは2021年7月に開設した。同社の手掛けるDOBOT製ロボットの事業が着々と成長してきたためだ。

導入ハードルが低い利点

最新の協働ロボット「Novaシリーズ」と重光貴明社長

 DOBOTは教育用のデスクトップ型ロボットの開発から始まり、ラインアップを大型化してきた。
 「ロボットエンジニアの育成と確保は、ロボット利用企業の大きな悩み事だが、DOBOTのような小型から徐々に大型ロボットに移行できると、情報系(ソフト系)をスタートにしてロボット技術者を大量に育てることができる。従来は機械系(ハード系)の人材がソフト系を学びながらロボット技術者へと育つのが一般的だが、ソフト系スタートでロボ技術者へとの流れが増えており、今後より一層増えるはず」と重光社長は言う。

 さまざまな産業で自動化需要が高まっており、新規にロボットを導入するケースも増えている。
 いくら操作が簡単になっているとはいえ、大きなロボットアームから始めると導入のハードルは高い。「まるで『おもちゃ』のようなDOBOT製ロボットから始めれば、導入ハードルが低くなる。その利点は確実にある」と重光社長は自信を見せる。

 16年に教育用の4軸制御デスクトップ型ロボット「DOBOT Magician(マジシャン)」がリリースされたのをきっかけに、DOBOT製品を取り扱い始めた。中国の国家方針「中国製造2025」の影響もあり産業用製品の開発をDOBOTが手掛けていたことや、「従来の『中国製』とのイメージとは違うクオリティーがあった」(重光社長)ため、本腰を入れてリソースを割き始めた。
 現在では例えばある自動車メーカーが、部品加工のサブラインでMagicianを使っている。用途は加工物(ワーク)の単純搬送などの軽作業だ。
 同社が扱い始めた初期は、世界でのDOBOTの用途は教育関係が7割、産業用途が3割ほどだったが、日本市場は特に産業用途が多く、7~8割を占めた。教育用途ではなく産業用途としてMagicianが求められたため、産業向けの拡販により力を入れた。

コロナ禍中で見せ方に悩む

 18年にはDOBOT関連では世界初となるユーザ-カンファレンスを開催するなど、代理店として大きな存在感を発揮している。
 だが、本来は教育用として開発されたMagicianを無理をして産業用として使用していたため不具合もあり、教育用途の一般客と産業用途の企業とでは要求スペックにギャップがあったという。

 そのギャップの解決策が、21年にリリースされた「産業用途のスペックを兼ね備えたMagician」とも言うべき協働ロボット「MG400」。MG400はテックシェアが日本総代理として拡販している。
 人の単純作業の代替として、低コストでないと導入できないような分野で普及し始めた。特に日本市場よりも、タイなどの東南アジアの日系企業での導入例が多い。例えば電気部品の工場で右から左への単純なワーク搬送などに使われるという。

 コロナ禍中のリリースだったこともあり、「見せ方」には悩んだという。それもありショールーム兼デモスタジオである開発センターを開設した。オンラインでの披露にも取り組んだが、個別案件が増えすぎて効率が悪かったのだという。

 今年7月にも名古屋市で、カンファレンスを開催する予定だ。テーマは「FA・DIY」。低コストでの自動化をメインに、自分で製作や修理をするDIY感覚で気軽にカスタムロボットを開発する環境について議論する。

安価という「機能」

 DOBOTのロボットのラインアップは着実に増えている。
 教育用のMagicianには、子供向けの「Lite(ライト)」もある。
 産業用の4軸制御デスクトップ型ロボットアームが、可搬質量750gのMG400と、同1.5kgのスカラタイプの「M1 Pro(プロ)」だ。
 6軸制御の協働ロボットが「CRシリーズ」で、可搬質量(kg)を示す型番の「CR3」「CR5」「CR10」「CR16」があり、これは主にシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)向けの、より本格的な産業用の機種だ。競合製品と比べ、価格は3分の2程度に抑えた。

 最新製品が、軽量で低価格を大きな特徴とする協働ロボット「Nova(ノバ)シリーズ」。サービス産業向けとして開発されたが、今年1月に開発センターで開いたNovaの新製品発表会には非サービス業の来場者、つまり製造業者も多く、関心の高さがうかがえたという。重光社長は「研究開発向けとしても有効」とみる。

 「人ができない特別なことをするのではなく、あくまで人の代替が目的。安くなければ代替には至らない。そのためDOBOTの製品は、『ロボットアームに6軸制御は必要か?』など根本的な問いを通過し、一つの『機能』としての安さも追求している」(重光社長)

 開発センターは、DOBOT製品を扱うショールームとしては国内最大規模という。協働ロボットのCRシリーズやNovaシリーズの他、小型のデスクトップ型ロボットアームのMG400が8台とM1Proの動きが見られる。名古屋営業所にも5台のMG400とCR5が1台あり、実物の動きを確かめられる体制を取っている。

  • DOBOT製ロボットビジョンや操作ソフト「DOBOT Studio Pro」、フレキシブルフィーダー「FF200」を組み合わせて画像検査システムも構築

  • さまざまなエンドエフェクターを実際に試すことができる

非接触で止まる安全機能

記者も非接触検知を体験

 安全性が高い協働ロボットCRシリーズと、軽量で低価格な協働ロボットNovaシリーズは共に、非接触検知という独自の安全機能を持つ。
 記者も体験してみたが、近づくと検知されて止まるし、もちろん触っても停止する。

 デスクトップ型ロボットアームも協働ロボットも、DOBOT 製ロボットならば共通して使える操作ソフトウエア「DOBOT Studio Pro(スタジオプロ)」で動くため、使い方の連続性が確保でき、設備導入を広げやすいのも利点だ。DOBOT Studio Proは、ビギナーからプロフェッショナルまで使える利便性を備え、「ロボット導入に必要な教育を最小化できる」と重光社長は強調する。

 また、デンマークのOnRobot(オンロボット)など協働ロボット向けエンドエフェクターメーカーの製品も取り扱う。日本総代理を務めるMG400についても純正エンドエフェクターを用意している。
 豊富な選択肢のエンドエフェクターをショールームで試し、高い接続性と拡張性を実際に確かめることができる。

楽しめる場所

 DOBOTのコンセプトは「軽作業の安価なロボット化」だ。それにテックシェアの技術を生かして画像処理用のシングル・ボード・コンピューターを組み合わせたり、DOBOT製のロボットビジョンを組み合わせたり、フレキシブルフィーダー「FF200」のように振動を与えながらワークをバラけさせて画像処理をしやすくする装置もある。
 DOBOTを活用したアプリケーションを開発センターで見て、動かして確かめることができる。

 DOBOT製品の他にも、四足歩行ロボットやAGVなどがあり、テストや体験も可能だ。セミナールームも完備しているため、セミナーやプレゼンテーションも実施できる。

 今後はさらにロボットの大型化が進み、手狭になる可能性もあると重光社長は苦笑する。そのため第2開発センターの開設も見据えている。
 仕向け先も広げる構えで、今後は物流向けなどにも提案していくという。「さまざまなロボットやアプリケーションを用意しているので、楽しんでもらえるはず」と重光社長は語る。

(ロボットダイジェスト編集部 芳賀崇)


  • DOBOT製品の他に四足歩行ロボットのアプリケーション開発なども

  • AGVなどのオペレーションシステムも開発する

  • セミナールームも完備し、座学のフォローも

[取材記者から]
まるでおもちゃのように可愛らしいMagicianを含め、DOBOT製品がずらりと並んで動いているのは、見るだけでちょっと心が躍る。しかも触れられるのもいい。簡単な動きから少し高度な動きまで、DOBOT製ロボットを幅広く確認できる。かと思えば、少しこわもてにも見える四足歩行ロボットが坂路や階段を上がり、AGVもけなげな感じで動いている。重光社長の言葉通り、楽しめる場所だった。


施設概要
名称:開発センター(ロボット製品ショールーム)
所在地:東京都江東区東陽4丁目10-4 東陽町SHビル5F
予約連絡先:同社ウェブサイト内「お問い合わせフォーム」などから


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