変化に対応できる組織に/川崎重工業 坂東賢二ロボットディビジョン長
スピーディーに動ける組織作り
――高木登前ロボットディビジョン長の後を継ぎ、今年4月にロボットディビジョン長に就任しました。
社長の橋本康彦をはじめ、これまでのロボットディビジョン長は、強力なリーダーシップで引っ張っていくタイプが多かったように思います。それももちろん大事ですが、私は一緒にやるメンバーと目線を合わせ、どうやる気にさせるかという視点を大切にしたいと考えています。リーダーが引っ張りつつ、全員で足並みをそろえ、目的に向かってスピーディーに動ける組織作りに取り組んでいます。
――具体的な施策を教えてください。
7月に市場調査チームや製品を管理するプロダクトマネジメントチームを立ち上げました。同様の業務を担当するチームは以前から存在していましたが、さらなる機能向上を目指して体制を強化しました。ロボット業界のトップを目指すには、ロボットディビジョンの地力を底上げする必要があります。
――その理由は?
市場環境が複雑化しています。それに対応しながら早く的確に市場を絞り込み、価値ある製品をスピーディーに提供するため、事業戦略を即座に実行できる体制を整えました。直近では、物流や検査工程向けにそれぞれ新製品を発売しました。物流業界はこれからさらに伸びる業界だと思っています。国内に限らず海外に向けても積極的に拡販する予定です。今回の体制強化では、海外でも信頼できるパートナー企業との関係構築など、マーケティングと同時に参入戦略を実行に移す意思決定の速さも重視しています。
変化する中国市場
――ロボットディビジョン長に就任するまでの経歴を教えてください。
就任直前まで、欧州や中東、アフリカを担当するカワサキロボティクスEMEA(Europe Middle East Africa、イメア)に在籍しており、ドイツにいました。就任に当たり、今年2月末に日本に帰国しました。前任の高木も同様に、カワサキロボティクスイメアで欧州全域を担当していました。カワサキロボティクスイメア在籍前を含めると、高木とは15年ほど一緒にシステム設計や自動化設備の提案といった仕事をしていました。長年ロボット事業に携わる中で、橋本や高木の考え方を受け継ぐことができたとは思っています。
――日本と海外のロボットメーカーとではどのような違いがありますか?
部材不足になった時、海外メーカーは「この状況では作れない」と回答して終わることが多い印象です。しかし、日本のメーカーはそれでもどうにかして解決できないかと動く傾向にあります。また、海外メーカーはトップダウンで速やかに物事が決まります。一方、国内メーカーは合議制で物事を決めるため、決断が遅い場合がありますが、合意が取れた時の推進力は強いです。
――現在のロボット市場の景況感を教えてください。
長期的には成長が見込めますが、短期的には少し厳しい状態です。国内の市場の動きは全体的にスローに感じます。パートナー企業とのつながりをより強固にし、販売活動に力を入れています。
――海外の市況はいかがでしょうか?
中国は世界のロボット市場の約半分を占めていますが、最近は中国のロボットメーカーが台頭しています。2030年には中国国内のロボットのうち、中国のロボットメーカーの採用比率が70%まで上がるとも言われています。そうした環境下で、中国でどのようにロボットビジネスを拡大するかが大きな課題であると同時に好機であるともとらえています。