生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2024.08.22

連載

[SI基礎講座vol.13] 保有してほしい能力①

ロボットのシステムインテグレーション(SI)に関する基礎知識を紹介する本連載企画。今回からは、ロボットを導入する企業の担当者・生産技術者や、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に「保有してほしい能力」を解説する。今回はまず、1つ目の「問題点顕在化能力」について取り上げる。

〔今回の講師:中小機構 経営支援アドバイザー 加藤栄作先生〕


――― ――― ――― ――― ――― ―――


【今回のポイント!】
〇「問題点を顕在化させる能力」は必須
〇作業を「付加価値」「非付加価値」「ムダ」に分ける
〇「ムダ」を除外、「非付加価値」を効率化し「付加価値」比率を上げる

求められる能力は3つ

生産技術者(SIer)として保有してほしい技術(SI基礎講座、スライド資料より)

 「皆さんに保有してほしい能力」についてお話しします。これは、ロボットを導入する企業の担当者や生産技術者にも、システム構築を請け負うSIerにも共通することです。

 その能力は3つ。1つ目は「問題点を顕在化させる能力」です。問題があればそれを問題として認識し、数値化などして明らかにする能力です。これがなければ何も先に進みません。
 2つ目が、「問題点を解決していく能力」ですね。顕在化した問題点に対して、それをどう解決するのか。正しい問題解決の手順を知り、真の原因、つまりは真因を見極める力も必要です。
 3つ目が「周囲を説得し、動かしていく技術、視点」で、これも極めて大切です。ロボット導入や自動化は、1人ではできません。導入する現場の人や、その周りの人達など多くの人が関わります。当然、導入前には経営者の決済も得ておく必要があります。多くの人に理解してもらい、納得してもらい、一緒に動いてもらわなければロボット導入は成功しません。

問題を顕在化させる能力・技術

問題点を顕在化させる能力、技術(SI基礎講座、スライド資料より)

 まずは1つ目の「問題点を顕在化させる能力」を見ていきましょう。

 いろいろやり方はありますが、ここではまず、各作業を「付加価値」を生む作業、「非付加価値」の作業、「ムダ」に分類していきましょう。
 作業にもいろいろありますが、この3つのどれかには必ず分類できるはずです。分類できれば、そこに問題点や課題が見えてくる。つまりは「問題を洗い出す力」「問題を見いだす力」が必要なのです。

 事例として載せているのは、製品の梱包・出荷のラインです。ラインから出てくる小箱10箱を大箱に詰めます。小箱10箱がそろうのに約1分20秒かかりますが、大箱に入れて梱包するのは16秒しかかかりません。手待ち作業が発生していると分かりますよね。大箱での梱包工程を集約して、5人ではなく3人や2人に減らすことが可能で、そうすれば「手待ちのムダ」をなくすことができます。

 加工や組み立てなど直接生産に寄与する作業が「付加価値作業」で、それの準備などが「非付加価値作業」、どちらにも該当しないものは「ムダ」と思って構いません。

TOP