生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2019.01.22

イベント

ロボットで溶接、塗布!/ロボット活用が進んだ分野に学ぶ

「第18回光・レーザー加工展(フォトニクス)」など3つの展示会が12月5日~7日、千葉市美浜区の幕張メッセで開かれた。会場で来場者の注目を集めたのは、ロボットを活用した実演だ。溶接や塗装加工の分野では産業用ロボットを早くから活用してきた歴史があり、知見やノウハウも多い。これら分野の最新提案から、今後の産業用ロボットの動向を探ってみたい。

3つの展示会に6万人近くが来場

 開催された展示会は「フォトニクス」、「高機能素材Week2018」「第28回液晶・有機ELセンサ技術展(ファインテック・ジャパン)」の3展で、計1200社以上が出展した。3日間で計5万9072人が来場し、会場はにぎわった。

 フォトニクスでは、ロボットでレーザー溶接をする提案が多かった。溶接では加工部が高熱になるため、人による作業は危険を伴う。作業中に生じる金属の微細な粒子(ヒューム)の吸引や、加工の熱源に使われるアーク光やレーザー光の紫外線による人体への悪影響などが懸念される。そのため、自動車ボディーの接合などでは、1970年代から産業用ロボットが活用されてきた。 

  • 会場の入り口には行列ができた

  • レーザー技術などの展示会フォトニクス

ファナックはパッケージで提案

ファナックは加工室まで含めパッケージで提案

 産業用ロボットで世界トップクラスのシェアを誇るファナックは、スポット溶接を自動化するシステムを展示した。
 溶接用ロボットだけではなく、ファイバーレーザーの発振器やロボットに付ける溶接加工ヘッド、加工室などを1つにまとめてパッケージで提案。加工室の内部でロボットが溶接し、ティーチング用のコントローラーを加工室の外側壁面に付けた見た目は、まるで工作機械のようだ。
 ロボットは溶接に特化した「アークメート100iD」を使用。現在、加工ヘッドは他社製だが、来年度中には自社での製造を始めて、パッケージの全てを内製する。

ファイバーレーザーの発振器は500Wと小型な物から6kWと高出力なものまで、加工物の厚さや要求する加工スピードに応じて仕様を選べる。「溶接用のロボットシステムは、大企業では導入の歴史が長く実績も多い。ただ付帯する装置も多く、システム構築が複雑なため、中小企業では敬遠されがちだ。そこでパッケージとしてまとめて提案し、導入を簡単にした」(展示担当者)。

ヘッドの工夫でティーチングを軽減

トルンプはレーザーヘッドで照射位置の補正を提案

 レーザ加工機メーカーのトルンプの日本法人(横浜市緑区、フォルカー・ヤコブセン社長)は、ロボット用のレーザー加工ヘッド「I-PLO 3D」を展示した。出力を調整すればマーキングから溶接まで幅広く使える。

 溶接では強固に接合するために、さまざまな角度から接合位置を照射する。立体的な動きのため垂直多関節ロボットが最適だが、ロボットの動作精度が悪いと、照射位置や焦点のずれが生じやすかった。I-PLO 3Dは独自の画像処理技術と補正機能でこのずれを軽減する。あらかじめ対象物の照射位置を設定すれば、画像認識で指定位置を特定し、適切なレーザー光になるように自動で補正する。そのため、照射位置や焦点のずれを軽減できる。

 照射位置を自動補正できるため、ロボット本体のティーチングをさほど精密にする必要がなく、ティーチングの手間も減らせる。対象物とレーザーヘッドがある程度まで近づけば、ヘッドが自動で位置を補正して照射する。

 「レーザー溶接で手間をかけずに自動化するには、ロボット側の工夫だけでは不十分。周辺機器でもティーチングを楽にできる。特に多品種少量生産が多い中小企業では、加工物の形状が変わってもティーチングの手間が少ないため、導入しやすい」と説明員はアピールする。

TOP