[特集SIerになろうvol.10]SIer機能を獲得する商社【その2】/山善
商社としてSIer業界に貢献
山善は中期経営計画の重点課題の一つとして「エンジニアリング機能の強化」を挙げており、長尾雄次社長も「商社としてのエンジニアリング力がお客さまのお役に立つ」との考えを示している。
その一環として、2017年4月にSIerの東邦工業(広島市安佐北区)をグループ化し、18年4月にはファクトリーオートメーション&エンジニアリング(FAE)営業部を新設した。
FAE営業部は生産設備の自動化や産業用ロボットのシステムインテグレーションの工程の一部を担う。
FAE営業部の公文良成副部長は「ビジョンセンサーやロボットハンドなど周辺機器の市場は、ロボット市場に合わせて同等以上に拡大するだろう」と話し、今は自動化ニーズに対応したアプリケーションのラインアップを拡充したり、全体の構想設計や見積もり作業をできる社内体制を整えているところだ。
商社だからこそ、スケールメリットを生かしたコスト削減も期待できる。公文副部長は「商品ラインアップやさまざまな商流といった山善の強みを生かし、商社の立場からSIer業界に貢献したい。SIerが装置開発に専念できるよう、環境を整備するイメージ」と話す。
東邦工業は、今のところFAE営業部と直接協業はしていないが、山善への技術的アドバイスや、システム販売に携われる山善社員の育成をしている。今後、「技術者を確保できれば構想設計もやっていきたい。最終的には、工程を完結するため製造機能を得る手立ても考えなければならない」と公文副部長は語る。
リソース投じ機運を高める
FAE営業部の課題は人材だ。システムの立ち上げにはさまざまな機械装置が必要で、工作機械などを扱う機械事業部、周辺機器や切削工具などを扱う機工事業部など部署を横断して人材や情報、商品を集める。
社外から招いた技術アドバイザーを含め、今は大阪本社と東京本社に合わせて11人が在籍する。「SIerとメーカーの仲立ちをするため、折衝や調整能力の高い人材を採用、あるいは育成したい」と公文副部長は話す。
ロボット導入を含む自動化の需要がさらに伸びるのは間違いない。公文副部長は「川の向こうに見えている需要に対して、川を渡る橋ができあがっていないのが今のSIer業界。ビジネスモデルの確立やSIerの地位向上が不可欠だ」と話し「業界内外でマーケットを育てようという機運の高まりが必要」と訴える。市場の発展のため、山善は今後も人・もの・金のリソースを投じていく考えだ。
――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)
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