「まるでウニ!?」横浜で複数の展示会、産ロボの未来を垣間見た(1/3)
なんと、兄弟でロボット研究者
産業用ロボットや光学機器に関連する2つの展示会が、パシフィコ横浜で開催された。1つは12月7日と8日に開かれた「横浜ロボットワールド」だ。前回まではサービスロボットの展示が目立つイベントだったが、今回は大学の研究室や企業内の研究グループの出展も多かった。
その1つが、山形大学の多田隈理一郎准教授の研究室だ。2021年にインターネットなどでも話題になった「球状歯車」を出展した。従来は樹脂製の物だけだったが、今回はアルミニウム製の歯車も初披露した。
球体の表面にある無数の凹凸が歯車の歯となる。回転3自由度を持ち、1つの出力で全方向に回転できる。これに、球状歯車を受ける特殊形状の歯車とモーターを組み合わせて、アクチュエーターとして機能させる。
ドローンに搭載したカメラの撮影方向の位置決めなど、具体的な用途も出てきている。「中空にして必要な時だけ出てくる簡単なアーム式アクチュエーターを内蔵すれば、内視鏡の先端をもっと小型にできる。中空ならば中に液体を入れて撹拌(かくはん)する用途もありえる。可能性はまだまだ未知数」と、多田隈准教授は話す。
そんな中で、樹脂製では強度面に不安があるとの意見もあり、今回は初めてアルミ製の球状歯車も展示した。複雑形状を加工できる工作機械の5軸マシニングセンタを使い切削加工した。球状歯車だけではなく、それを受ける特殊形状の歯車もアルミで製作した。
また、多田隈准教授は兄弟そろってロボット研究者として有名。実弟の東北大学大学院の多田隈建二郎准教授も出展した。不定形物や軟体な対象物(ワーク)でも、下からすくうように持ち上げるエンドエフェクターなどを展示した。
まず、ワークの下に金属製の板を差し込む隙間を作る。その隙間に板を差し込み、先端まで強度を出すために板をアーチ状に曲げて持ち上げる。
担当者は「不定形なワークも下に接地さえしていれば持ち上げられる。小型化すれば、細胞なども扱える。生物系の研究所などでも使用を見込める」と話す。
やさしくイチゴを扱うハンド
パナソニックホールディングスの技術部門は、力覚センサーを内蔵したロボットハンドを展示した。熟したイチゴのハンドリングをイメージしたデモを見せた。
指先に無限軌道(キャタピラー)のような仕組みを搭載したグリッパータイプのロボットハンドを開発し、その挟み込む部分に力覚センサーを埋め込んだ。
ワークと接する強さを認識しながら挟み込む。事前の設定値に合うように把持力を調整することで、熟したイチゴを潰さずに挟んで持ち上げられる。展示では樹脂サンプルのイチゴだったが、研究所では生のイチゴを扱った実績もある。
「ロボットハンドの指先を小さくするのは難しく、細かい作業をしにくい。ただ、無限軌道のような仕組みで、人間のつまみ上げるような動作も再現できた」(担当者)。