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2019.07.03

[特集FOOMA JAPAN]食品産業に最適な新製品を紹介/ストーブリ

ストーブリは、自動車部品や半導体、食品、医薬品産業に適したロボットをラインアップし、特に欧州で多くの実績を持つロボットメーカーだ。日本市場ではロボットの導入がそれほど進んでいない食品や医薬品産業への販売に注力する。全機種とも密閉性が高く耐環境性に優れるのが特徴の一つで、丸洗いに対応するモデルもある。「FOOMA JAPAN(国際食品工業展)2019」では、小型、高速化したスカラロボット「TS2」などを出展する。

日本では販売台数の5割が食品

ロボットを生産する仏ファベルジュ工場

 スイスのチューリッヒ近郊に本社を置くストーブリは、繊維機械や各種コネクター、産業用ロボットの製造、販売をする。ロボット事業は1982年に米国のロボットメーカー、ユニメーションとの提携をきっかけにスタートし、今は仏とスイスの国境に近い仏ファベルジュの工場で生産している。

 同社のロボットは、欧州では自動車部品や半導体、食品、医薬品産業などで幅広く導入実績がある。独ボッシュとの提携を通じて自動車部品工場での実績を積み、2004年にはボッシュのロボット事業を取得した。

 自動車産業でノウハウを持つ同社だが、「日本の自動車産業は競合するロボットメーカーが多く、ロボットの導入が比較的進んでいることもあり、食品や医薬品産業に注力する」とロボット事業部営業グループの林田耕一ナショナルマネージャーは語る。特に食品産業への販売に力を入れ、「日本での販売台数の5割は食品産業」(林田マネージャー)という。

 食品産業では、顧客がロボットの扱いに慣れていないことが多いので、ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の役割は重要だ。同社はシミュレーションや実機テスト、ロボット講習といった導入前のサポートなどを積極的に行っている。林田マネージャーは「お客さまが『こうしたい』という明確なイメージを持っていないこともあるので、SIerと一緒にラインを作るつもりで取り組んでいる」と話す。

耐水、低発じんが好評

「クリーンルームや無菌室、高湿度環境にも対応する」と話す林田耕一マネージャー

 同社は6軸の多関節ロボットと4軸のスカラロボットをラインアップする。どの機種もアームの構造的に密閉性が高いのが特徴だ。密閉性が高いのでアーム内部に空気圧をかけることができ、高い防水性を持つ。ロボット本体をそのまま丸洗いできるレベルだ。

 密閉性が高いことで得られるメリットがもう一つある。それは、発じん性が低いこと。通常、ロボットからは内部の歯車やシャフトがこすれることで、ごく小さなちりが発生する。密閉性が低ければちりは空気中に舞い、ラインの上にも落ちることになる。
 「発じん性が低いことは、衛生面の管理が厳しい食品産業で評価されるポイントの一つ」と林田マネージャーは話す。

 同社では、食品産業向けに販売台数が多いのはスカラロボットだ。「コンベヤーの真上に設置するパラレルリンク型ロボットに比べて、スカラロボットは本体がコンベヤー上部にないため、異物が混入しにくいレイアウトが可能だ。加えてわが社のロボットは発じん性が低いので、異物混入のリスクをさらに低減できる」と同社のロボットのメリットを強調する。

新型スカラロボットを出展

 FOOMA JAPAN2019では、7月に発売したばかりの新型のスカラロボット「TS2」を出展する。TS2はスカラロボット「TS」シリーズの後継機種。重量や体積は約30%小さくなり、最大約10%高速化した。ケーブルを内部に収納したことも、体積の削減や防水性の向上に貢献する。

 また、垂直多関節ロボット「TX2」も出展する。TX2も「TX」シリーズの後継機種として昨年発売した新しい製品。TS2とTX2の両方をそろえて展示するのは、FOOMA JAPAN2019が初めてだ。TS2とTX2の発売により製品の世代交代が完了し、今後拡販に努める。

  • ケーブルが収納されたTS2

  • リニューアル前のTS

  • 昨年発売されたTX2。FOOMA JAPAN2019で初めてTS2とそろって出展する

  • リニューアル前のTX

実践的な展示が見どころ

「周辺機器やソフトウエアの作り込みも見てもらいたい」(林田マネージャー)

 FOOMA JAPAN2019では、TS2を使った実践的な展示が見どころの一つ。食品工場では大型のオーブンなどで一度にたくさんの食材を調理するため、一時的に食材を滞留させる工程が少なくない。そういった場所にはターンテーブルが使われるが、食材を等間隔に並べる作業が必要だ。
 「ターンテーブルのようなところでビジョンセンサーを用いて製品を整列、トレー詰めするのは食品産業で比較的多いニーズで、実際のアプリケーション(使われ方)に近い」と林田マネージャーは語る。

 TX2を使い、飲み物を自動で供給するシステムも展示する。来場者がパネルを操作して飲み物を注文し、ロボットが注いでステージにコップを置くという内容だ。協働ロボットではないが、ステージ周辺は柵がなく、人の接近を検知して動きを遅くしたり止めたりする半協働ロボットとして展示する。
 ハンドを水で洗浄する実演もする。「洗える協働ロボットは他にない」(林田マネージャー)と自信を見せる。TX2には協働ロボット仕様もラインアップするが、林田マネージャーは「卓上で人と働くというより、生産工場での高速搬送を想定しており、あえて協働ロボットにしなかった」と話す。

知名度向上を狙う

TS2やTX2を出展した欧州の展示会「AUTOMATICA(オートマティカ) 2018」の様子(ストーブリ提供)

 「当社はターゲットとする産業を絞っているので、食品産業のお客さまにピンポイントでアピールできるFOOMA JAPANは貴重。少しでも知名度向上に役立てたい」と意気込みを語る林田マネージャー。

 SIerの発掘にも期待を寄せる。SIerにはそれぞれ得意とする産業や作業の分野があるが、「食品産業を得意とするSIerは多くない」という。「顧客やSIer同士の紹介で新しくSIerと知り合うこともあるが、多くの来場者が集まる専門展には期待したい」と話す。

 同社のお膝元である欧州では食品産業でもロボットの導入が進んでおり、「欧州の食品工場が少し未来の日本の食品工場だとすると、今の2倍や3倍どころではなく、市場は拡大する」と日本の食品産業に期待する林田マネージャー。
 欧州で培ったノウハウを日本市場で活用しつつ、「ロボット導入にかかる一時的な投資金額の大小ではなく、処理能力の高さをアピールしたい」と今後の展望を語る。

(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

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