[注目製品PickUp!vol.17]早さを極めたハイエンドロボット【後編】/ユーシン精機「FRA」
携帯電話回線で稼働監視
小谷高代開発本部責任者は「早さを追求するための工夫には、絶えず取り組んできた」と語る。その上でハイエンド機種の「FRA」ではさらなる生産性向上を実現するために、振動を制御したり最適設計で軽量化するなど、従来とは違う角度から開発に取り組んだ。
FRAにはソフト面でも特徴がある。IoTを活用して稼働状態を監視するサービス「イントゥ・ライン」への対応だ。「直感的」を意味する「intuitive(イントゥイティブ)」から名前を取ったIoTサービスで、使いやすさを重視した。パソコンやタブレット、スマートフォンなどデバイスを問わず、一般的なブラウザで機械の稼働状態を見ることができる。取り出しロボットのFRAだけでなく、主要メーカーの射出成形機や温調機の状態も監視できる。
通常、稼働状態を監視するシステムを導入するには、ネットワークやサーバーなど社内システムを整備する必要があり、数百万円単位の初期費用がかかることが少なくない。データのセキュリティーを心配する声も根強く、中小企業がIoTを導入する際の根強いハードルとなっている。FRAは本体に通信用のカード(SIMカード)を内蔵し、携帯電話回線を使って単独で通信するので、そういった手間やコストがかからない。
一段階上の生産性向上策を
イントゥ・ラインはスモールスタートをコンセプトに開発されたサービスで、FRAを稼働させた当日から特別な準備なしに利用できる。FRA本体には標準でカメラも搭載されており、稼働する様子をリアルタイムで監視できる。導入しやすい分、表示画面などのカスタマイズには対応しない。
イントゥ・ラインの利用料はFRAの導入初年は無料で、2年目からは通信料込みで年間6万円。1契約につき、FRAや既存の取り出しロボット、射出成形機、温調機など合計5台まで監視できるので、1カ月1台当たり1000円という低コストでIoTを導入できる計算だ。
小谷氏は「イントゥ・ラインでわが社が得られる利益は少ないが、お客さまの現場の生産性向上につなげてもらいたい」と話す。FRAで機械ごとの生産性向上を追求しながら、イントゥ・ラインを活用して一段階上の現場責任者の視点で生産性向上のヒントを探る。取り出しロボットの情報に限ってユーシン精機からも見ることができるので、故障時に素早く診断、対処できるメリットもある。FRAの発売から約2年になり有料契約への移行が始まっている。稼働データの活用を促し、有料契約に結びつけるのが課題だ。