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2020.02.17

連載

[随想:ロボット現役40年、いまだ修行中vol.11]注目高まるSIer 、協会設立までの道のり【後編】/小平紀生

過去には日本ロボット学会の第16代会長(2013~14年)を務め、現在も日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会長など、ロボット業界の要職を数多く務める三菱電機の小平紀生氏。黎明(れいめい)期から40年以上もロボット産業と共に歩んできた同氏に、自身の半生を振り返るとともに、ロボット産業について思うところをつづってもらった。毎月掲載、全12回の連載企画「随想:ロボット現役40年、いまだ修行中」の第11回。ロボット産業の強化にはシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の組織化が必要と意識してからほぼ10年、「ようやく形になった」と小平氏は言う。

若手同士の化学反応

 経済産業省により、2016年から3年間の「ロボット導入実証事業」と、17年の「ロボットシステムインテグレータ育成事業」が実施されました。経産省からの委託を受けて窓口として実際に実施するのは日本ロボット工業会(現会長・橋本康彦川崎重工業取締役)です。
 ロボット工業会としては、なかなか集まらなかったシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の情報が、この活動を通じて300件以上、目の前に広がったわけです。このあたりから一気にSIer組織化の勢いがつきます。

 これらの事業を担当した、経産省ロボット政策室の小林寛技術一係長(当時)の若手官僚らしい「イキの良さ」と、ロボット工業会側の高本治明さんや須田泰行さんら若手職員の「過去のしがらみにとらわれない感覚」が化学反応を起こしたようです。

 私がロボット工業会からSIer組織化委員長を仰せつかったのは17年4月のことですが、既に「化学反応」が始まっていますので、流れに乗るだけです。
 この頃同時に制作していた「ロボットシステムインテグレータのスキル読本」の執筆陣だったバイナス、ヒロテック、ミツイワ、オフィスエフエイ・コム、高丸工業などを初期メンバーとして、SIerの業界団体設立の検討が始まりました。

手探りながら着実に前進

SIer協会のメンバーとの懇親会

 17年の4月から11月までの私のスケジュール表には、ほぼ毎週経産省ロボット政策室かロボット工業会に通ってSIer組織化の打ち合わせをした形跡が残っています。
 小林、高本、須田、小平でまず組織のグランドデザインを描いて、組織化委員会でSIerの意見を聞いて反映させます。

 検討段階から準備段階に入ったのは11月7日のこと。「第一回FA・ロボットシステムインテグレータ協会設立準備会議」を一般公開で開催し、SIerの「ビジネスネットワークの構築」「事業基盤の強化」「専門性の高度化」を目的とした業界団体を18年夏に設立すると表明しました。この会議で新たに幹事会社を公募し、協会の設立準備がオープンになりました。

 協会の名称は意外と幹事会で議論になりました。最も支持が多かったのは「ロボットシステムインテグレータ協会」でしたが、合理的な自動化システムを作るには「ロボットにこだわり過ぎず、適材適所で最適な機器を使うことが肝心」という理由から工場自動化(ファクトリーオートメーション)を意味する「FA」を付け、FA・ロボットシステムインテグレータ協会という名称になりました。
 略称は英語の頭音字を取ってJARSIA(ジャルシア)とし、簡潔な呼称としてSIer協会も使用することになりました。

 最大の悩みは初代会長。SIerは中小企業が多く、業界活動の経験者がほとんどいないのですが、最初はさまざまな地盤固めが必要です。ここはやはり業界活動経験者ということで、鋳造関係の団体で役員経験のある三明機工の久保田和雄社長にお願いすることになりました。
 会員の大多数は中小企業で、皆さん一国一城の主ですから、まとめるのが大変。現在2年目ですが、久保田会長はよく通る声で絶妙の采配ぶりを見せています。

「役割は終わり」と思いきや

 18年7月13日の設立総会で正式に協会が発足し、その後の活動ぶりは目にする機会も多いと思います。
 SIerという業種そのものがこれまで明確ではなかったため、課題の抽出だけでも大変な努力が必要ですが、会員数もいまや200社を超えて、成果も徐々に形になってきました。
 「団体が発足すれば私の役割は終わり…」と思っていたのですが、SIerでなくても就任できる「参与」なる役回りができており、一歩引いてではありますが今でも協会の活動に関わり続けています。

 ロボット工業会の高本さん、須田さんは現在もSIer協会の事務局を担っていますが、経産省の小林さんはSIer協会設立の頃には係長から課長補佐に昇格され、19年1月に復興庁に異動となって福島県に赴任しました。
 赴任直前の18年末に、霞が関で2人でささやかな送別会をしましたが、話題はやはりシステムインテグレーション。彼が学生時代に専攻した都市計画と、ロボットのシステムインテグレーションには類似性があるとの話題になりました。
 都市計画の手法や考え方は、勘、コツ、経験的な色合いの強いロボットのシステムインテグレーションにサイエンスを導入する糸口になるかもしれない。「いつか深掘りしてみたいね」と話して彼を福島に送り出しました。

――終わり
(構成・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

小平紀生(こだいら・のりお)
1975年東京工業大学機械物理工学科卒業、同年三菱電機入社。2004年主管技師長、13年主席技監。日本ロボット学会会長などを歴任し、現在は日本ロボット工業会のシステムエンジニアリング部会長やロボット技術検討部会長、FA・ロボットシステムインテグレータ協会参与、セフティグローバル推進機構理事兼ロボット委員会委員長などを務める。東京都出身、67歳。

※本記事は設備材やFAの専門誌「月刊生産財マーケティング」でもお読みいただけます。

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