【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.7]SIer、コロナで大きな期待!
「メガインテグレーター」目指し技術開発/豊電子工業
豊電子工業(愛知県刈谷市、盛田高史社長)は自動車業界向けのロボットシステムに強みを持つSIerだ。
1981年にSIer事業に本格参入し、約40年の歴史を誇る老舗企業が目指すのは、顧客の生産ラインの構築を一手に引き受ける「メガインテグレーター」。生産ラインを一から構築するには幅広い知識や技術力が求められるが、盛田社長は「どう付加価値を付けて競合他社と差別化するかを考え、さまざまな要素技術の開発を進めている」と語る。
直近では主要顧客の自動車業界の電気自動車(EV)シフトを見据え、ブルーレーザーを使った溶接ロボットシステムを開発した。ブルーレーザーは従来の赤色レーザーと比較して波長が短く、EVのモーターや電池に使われる銅材の溶接などに力を発揮する。
同社にロボットシステムを1台常設し、顧客向けのテスト加工を2020年1月から始めた。成瀬雅輝常務執行役員は「ブルーレーザーを使うと銅部品がどのように溶接できるのかを、まずはわが社で試してほしい」と話す。
上下、前後、左右の直線3軸に回転軸を2軸加えた5軸加工機ベースのレーザー焼き入れ装置も新たに開発し、20年1月から販売を始めた。レーザー焼き入れとは、レーザーが持つ熱エネルギーを利用して金属の表層部を相変態(物質の結晶構造が変わること)させることで、硬度を高める加工法を指す。
レーザー焼き入れ装置には工作機械を動かすのに使われる数値制御(NC)装置が搭載されており、工作機械に使い慣れた作業者なら簡単に扱えるのも特徴だ。
同社は以前から、レーザー焼き入れのロボットシステムを手掛けてきた。大型の自動車部品が主なターゲットだったが、今回新たに開発したレーザー焼き入れ装置はEVシフトで小型化が進むと見込まれる歯車部品などをターゲットに据える。
成瀬常務は「EVの弱点でもある航続距離を少しでも伸ばすため、車両の軽量化は不可欠で、そのために部品の小型化も進められている。既存のロボットシステムは大型の部品を想定していたので、小型部品を対象としたシステムを新たに開発した」と経緯を述べる。
海外比率をさらに高める
同社は国内外の売り上げ比率が1対1で、売り上げの半分は海外だ。盛田社長は「19年は実績ベースで25カ国にロボットシステムを輸出した。遠方ではアルゼンチンや南アフリカにも納めた」と胸を張る。
今後は海外売り上げの比率をさらに高める考えで、特にロシアや東欧の市場開拓に力を注ぐ。その布石として、17年にはポーランドに現地法人を立ち上げ、直近では工場建設の準備も進めている。
また、新しいロボットのアプリケーション(応用的な使い方)の開発にも努める。その一つが検査工程の自動化で、盛田社長は「わが社だけでは完結できないので、独自技術を持ったベンチャー企業との協業を加速させたい」と意気込む。その一環で、レーザー測定ユニットを開発するベンチャー企業のXTIA(クティア、東京都千代田区、八木貴郎社長兼最高経営責任者)との協業も始めた。
この他、得意の自動車業界だけではなく、最近は物流業界や航空機業界などの開拓にも注力する。物流業界や航空機業界を深耕する専任のプロジェクトチームを設け、本格的に攻勢をかける考えだ。