【特集】[集結! 自動化の最新提案vol.3]BCPが新たな価値に/MUJIN 滝野一征CEO
増える引き合い
――まずは御社事業の現状について教えてください。
今手掛けているのは、半年前や1年前に決まった案件です。打ち合わせや商談が遠隔になるなど多少の不便はありますが、事業に大きな影響はありません。
――新規の引き合いは?
わが社は、工場の工作機械などを自動化する 「FA(ファクトリーオートメーション)」と、倉庫や物流センターを自動化する「物流」の2分野で展開しています。先が見通しにくい状況ですので、FAの引き合いは減少していますが、物流は大きく増えています。
――なぜですか?
今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、トイレットペーパーが店舗の棚からなくなったのは記憶に新しいと思います。あれは物流が追い付かなかったことが原因で、他にも家にいる時間が増えたことで日用品の物流量は増え、またインターネット通販などの物流量も大幅に伸びています。これまでならアルバイトを増員して対応していた物流企業でも、コロナの懸念がある中で人の増員はなかなかできません。物流ニーズは膨れ上がっても、対応できる物流量はむしろ下がっている。そこで、人を増やさずに物流量を増やせる自動化が大きな注目を浴びています。実際に、コロナ騒動が始まる前にMUJINのロボットシステムを導入していた企業では、物流量の増加に対応できた事例がいくつもあります。
1.5倍の物量に対応
――同業他社が対応しきれない状況下ですから、自社の売り上げが確保できるのはもちろん、取引先からも喜ばれそうです。
まさにその通りで、コロナ禍でも安定稼働が可能な企業として信頼感が高まったとの声をいただいています。コロナ禍の前から物流業界では人手不足が深刻で、必要な人手を集めるのに苦労していました。努力してようやく採用しても、コロナウイルスが感染拡大する中では満足に出勤できず、万が一感染者が出たら事業継続にも支障が出ます。そうなると、事業を安定して続けるには自動化しか道はありません。これまで、自動化のメリットは、生産性の向上や、省人化でした。そこに、BCP(事業継続計画)という新たな価値が加わったと考えています。自動化は、感染症の拡大など、有事の際に事業を継続する対策になります。消火用のスプリンクラーを「必要になる日が来るか分からないから設置しない」という経営者はいません。ロボットも同様に、事業リスクの管理の一環としての導入が増えそうです。