[SIerを訪ねてvol.16]難しい仕事が「飯のタネ」、駆け込み寺のSIer【後編】/コスモ技研
実績が客を呼び込む
コスモ技研が得意とするのは、付加価値が高く特殊なロボットシステム。競合他社が敬遠する難しい案件を「飯のタネ」とし、実績を着実に積み上げてきた。顧客からは駆け込み寺として認識される。
同社は、五十嵐社長ら5人のメンバーが専用機メーカーから独立して、1999年に創業した。まだ歴史は浅いが、トヨタ自動車やデンソー、三菱重工業、川崎重工業などの名だたる大手企業が取引先に名を連ねる。
大手企業との取引では「実績」が物を言うケースが多いが、どうやって実績を積み重ねてきたのか。そのきっかけは、今から16年ほど前に受注した大手製鉄会社の案件だった。
その製鉄会社の工場では継ぎ目のないシームレスパイプを製造していたが、当時95%だった歩留まり(良品率)を97%まで高めたかったという。
製鉄会社は、コスモ技研を含め複数社に歩留まりを高めるロボットシステムの開発を依頼したが、コスモ技研が提案したシステムなら歩留まりを目標値の97%よりも高い98%に向上できると分かった。さらに、実績としては99.5%の歩留まりも達成できたという。高い技術力が製鉄会社に評価され、システムの受注に至った。
この案件を皮切りに、他の大手企業からも徐々に声がかかるように。同社には専任の営業担当がいないが、既存の実績が他の顧客を呼び込み、取引先の裾野が広がった。
営業技術部の柴田和宏部門長は「引き合いの内訳はホームページからの問い合わせが3割、付き合いのある商社からの相談が3割だ。既存の取引先から、システムを納入した工場とは別の工場を紹介してもらえるケースも多く、それが残りの4割を占める」と説明する。
目を引くアメコミ風キャラクター
高度なロボットシステムの構築に携わるだけあり、従業員は機械設計も電気制御も含め、日々の業務で頭を使う機会が非常に多い。そのため同社では、従業員が余計なストレスを抱えないよう、働きやすい職場環境の整備にも力を入れる。
全面ガラス張りで近代的な外観の社屋は3階建てで、3階には休憩や交流に使用できるラウンジを設けた。従業員同士の活発なコミュニケーションを図る目的で、交流会も定期的に開催するという。
事務所では、従業員のデスクのスペースを広めに取り、事務作業をしやすくした。デスクは袖机も含め、通常の1.5倍の広さがあり、デスクトップPCを使いながらノートPCを使ったり、図面を大きく広げながら確認できたりと、効率よく作業ができる。
この他、会議室の壁の一面をホワイトボードにし、ホワイトボードを用意する手間を省くと同時に、思い付いたアイデアをすぐに壁に描いて仲間と議論できる環境なども整備した。
「顧客満足度を高めるには、大前提として従業員の満足度も高める必要がある。従業員がなるべくリラックスした状態で仕事に臨める空間を意識している」と柴田部門長は話す。