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2020.09.23

連載

[気鋭のロボット研究者vol.14]地図とカメラで障害見極め【後編】/名城大学 田崎豪准教授

ロボットの目、視覚センサーの研究をする田崎豪准教授は、カメラを使って自動車や無人搬送車(AGV)の自動運転を目指す。一般的に使われる3次元の地図データと、先端に取り付けたカメラ映像を組み合わせて、障害物を検知する。従来の方法に比べ、手間やコストを抑えられるという。

持続可能な自動運転を

地図データとカメラで障害物を確認する

 事前に作成した周囲の3次元データとロボットに取り付けたカメラの映像を比較し、3次元データにない物を異物と認識させて垂直多関節ロボットにつかませる。前編で紹介したこの技術の基礎となった自動運転の研究は今も進めており、地図データと視覚センサーの映像を組み合わせた方法を模索する。目指すのは、環境の変化にも対応できる持続可能な自動運転だ。

 自動運転では、3次元の地図データを作成し、立体的な仮想(バーチャル)空間で進路を決める。「3次元の地図データを作るには、LiDAR(ライダー)と呼ばれるレーザー計測が使われるが、コストがかかる」と田崎准教授。少しでも街並みが変われば、再度計測して地図データを作る必要があり、手間とコストの面から更新し続けることが難しいという。

 そこで、3次元の地図データを、ドライブレコーダーなどのカメラ映像で更新し、利用できないかと考えた。すでに作成されている3次元の地図データには既存の道や建物の情報はあるが、新しくできた建物、車や人などの障害物の情報はない。一方、カメラの映像は、距離感は捉えにくいが、現状を映している。この2つを組み合わせれば、地図データを更新し、精度よく障害物を検出できる。

 ただし「現状はCGデータでの検証段階で、実データでうまく動くかはまだ分からない」と言う。当面は、環境変化の少ない工場向けAGVなどでの利用を考える。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

田崎 豪(たさき・つよし)
2006年京都大学大学院情報学研究科知能情報学専攻修士課程修了、東芝入社。13年京都大学大学院情報学研究科博士後期課程を修了し、18年名城大学理工学部准教授。同年に開かれたロボットの国際的イベント(ワールドロボットサミット)で経済産業大臣賞とNEDO理事長賞を受賞。米国電気電子学会(IEEE)上級会員。1981年生まれの39歳。三重県出身。

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