[注目製品PickUp!vol.29]追従して人間のよきパートナーに【後編】/トヨタL&Fカンパニー「AiRシリーズ」
小口の荷物を素早く運ぶ
足を見て付いてくる
これまでの無人搬送車(AGV)と違うのは、人の後ろに付き従い、作業のサポートをする「協働」の点だ。それを実現するには、優れた追従機能が必要だった。
AiRは2017年から開発が始まったが、追従の技術は同じトヨタグループの豊田中央研究所でそれ以前から研究していた。その研究成果を実装した。
赤外線などを発信するビーコン(発信器)を感知させたり、作業者ごとの識別番号(ID)を識別装置に読み込ませて追従させる仕組みではない。前後に取り付けた光学式レーダーによって作業者の足を認識して追いかける。そのためビーコンの受け渡しや、専用の読み込みシステムを作る必要はなく、ボタンを押した人に付いてくる。
追従で重要なのは、前を歩く人に不安感を与えないこと。そして急停止してもぶつからない安全面も考え、距離を保った状態で人が通ったルートを一定時間内に通過するようプログラムされる。人とロボットの距離は、作業者が調整できる。
連結させれば1人で複数の運搬も
他のAiRの後を追う「カルガモ機能」もあり、人を先頭に複数台を追従させることも可能。連結器などで機械的につなげるわけではないため、何台でも並べて使える。また、1台ずつが独立して動くため、機械的につなぐ場合と異なり、全車同じ軌跡でカーブを曲がる。これにより、後続車が棚などに接触する心配がない。また、個別に障害物回避もできる。
追従する作業者の進む方向と速度から足の位置を予測して動くため、仮に別の作業者が人とAiRの間を横切っても、進行方向の違いから間違って付いていくことはない。
人混みで使うには追従や回避機能に課題もあるが、「今後はその課題を解決することで、物流倉庫の作業だけでなく、空港やショッピングセンターなどでも使用できる製品を目指す」と一条センター長は言う。
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)