[特集 物流機器は新世代へvol.4]群雄割拠のAGV・搬送ロボット【後編】
カメラ・光学技術をAGV向けに
AGVが大きな注目を集めている。国内外の多くの企業がAGV事業に参入し、新製品を次々に発表する。こうした動きを受け、AGVメーカー向けの提案も活発だ。AGV向けの要素技術や要素部品の外販が相次ぐ。
キヤノンは2020年8月、AGVの誘導に使う「ビジュアルSLAM(スラム)」技術を発売した。
磁気テープの敷設などなしに自律的に目的地まで移動できるSLAM技術。周囲のセンシングには、レーザースキャンを使う方式のほか、カメラを使う方式もある。キヤノンが発売したのは、カメラを使う方式だ。
製造現場や資材倉庫では、一時的に置かれた荷物などで、状況が常に変化する。SLAM方式では事前に登録した地図データと、周囲をセンシングして抽出した特徴点を比較して、自らのいる位置を認識する。そのためカメラの前に荷物があると特徴点を検出できず、AGVが自分の位置を見失うことがある。
「キヤノンのビジュアルスラムは画角が広い撮影データを用いるため、特徴点の多くが隠れていても位置を見失いにくいのが強み」とイメージソリューション事業本部の枝窪弘雄副事業本部長は話す。
経路変更が容易な独自方式を提案
機械部品メーカーのTHKも、AGVの誘導システムを外販する。THKが提案するのが、独自開発した新たな誘導システム「SIGNAS」だ。
SIGNASは「サインポスト・ナビゲーション・システム」の略。事前に経路に設置した専用の目印(サインポスト)を、AGVに内蔵する双眼のカメラで認識。そのサインに応じた動作を実行する。サインポストは縦3×横3のマス目を備え、白色(反射板あり)と黒色(反射板なし)の組み合わせでサインを表す。
周囲の状況が変わった際には、サインポストの位置をずらすだけで経路を変更できる。
工場内の搬送はもとより、建設現場や屋外の農業分野でも応用できると見込む。19年には総合建設業の東急建設と共同で、建設現場でSIGNASを搭載したAGVの実証実験を行った。
ハードウエアも提供可能
村田機械(京都市伏見区、村田大介社長)は、AGVや移動式ロボットの自律移動を実現するSLAM式の制御システム「It's Navi(イッツナビ)」を販売する。工場向けAGVにも使えるが、業務用の掃除ロボットや小売店の店頭向けの商品管理ロボットなどにも採用されている。制御システムだけでなく、要望に応じて移動式ロボットの土台となる移動機構も開発、提供できる。
AGVや移動式ロボットの車両だけを販売する企業もある。Tech Share(テックシェア、東京都江東区、重光貴明社長)は21年1月、中国AgileX Robotics(アジャイルエックス・ロボティクス)の車両を発売。完成品ではなく、二次開発を前提とするAGVや移動式ロボット用のハードウエアだ。