生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.06.29

[特別企画ラボラトリーオートメーションvol.2]実験のやり方を変える! キーマンに聞いたLAの現状と難しさ/第一工業製薬×デンソーウェーブ

大手工業用薬剤メーカーの第一工業製薬は今年夏、ロボットを使った「ラボラトリーオートメーション(LA、実験など研究室の作業の自動化)」の第一歩を踏み出す。三重県四日市市の四日市工場霞地区の研究所に、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)の協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を導入する。そこで、LA特別企画のvol.2では、第一工業製薬の橋本賀之執行役員研究本部長と、デンソーウェーブの澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長にウェブインタビューをした。ロボットユーザーとメーカーのそれぞれのキーマンに、LAの現状や難しさ、今後の構想などを語り合ってもらった。

「ロボットだと2日」と脅威感じる

「2002年にドイツの訪問先でロボットシステムを見学し、衝撃を受けた」と語る第一工業製薬の橋本賀之執行役員

――最初にデンソーウェーブの澤田部長に聞きます。ロボットメーカーから見て、LAの需要はいかがですか。

澤田洋祐 LAのニーズは日本でも徐々に高まっています。ただ、わが社は競合に先駆け、2006年からLA関連のビジネスを始めたのですが、最初の実績はドイツでした。LAの取り組みは欧州の方が早く、日本は出足が少し遅れている印象です。

橋本賀之 私は02年に訪問したドイツの関係先の研究所で初めてロボットシステムを見て、衝撃を受けました。人がやると1カ月近くかかる実験作業を、ロボットが2日ほどで仕上げる様子を目の当たりにし、ドイツと日本の実験現場の違いに脅威に感じたのを今も覚えています。ドイツでは作業者の人件費が高く、有給休暇の取得率もほぼ100%なので、作業者の労働力を代替するのに早いうちからロボット化に着手していたのだと思います。

「改めてLAの難しさを実感した」とデンソーウェーブの澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長

――研究所にロボットを導入する難しさはどこにありますか。

澤田 研究所では一般的に、実験や作業の内容が一つ一つ違っており、ロボットを使っても採算が取りにくい印象です。今回、コボッタの導入現場を実際に見学し、改めてLAの難しさを実感しました。産業用ロボットは今までファクトリーオートメーション(FA、工場の自動化)向けとして、比較的大量生産を前提とした現場に導入されてきましたが、研究所は大量生産とは対極に位置します。人が作業をすることが前提の環境で、ロボットに求められることは人の作業の単純な置き換えになります。人前提の作業環境を維持しながら、ロボット用に最適化されていないツールをそのまま使うことが多く、自動化が難しいです。

橋本 02年にドイツでロボットシステムを見学して以来、いずれ日本でもロボットが研究所で普通に活躍する時代が到来するだろうと想像しながら、ずっと社内にロボットを導入したいと考えていました。ですが、研究の仕事は非定常な作業が多く、自動化しにくいのが実情です。例えば、実験で使用する化学薬品を人が専用の容器に量り取る作業がありますが、サラサラした液体や粘度が高くドロドロした半固体や粉体、そして今まで扱った経験がない全く新しい特性の化学薬品など、さまざまなものを取り扱います。しかも、日本の多くのメーカーでは投資対効果が厳しく求められるため、ロボット化を進めるにしても、決裁権のある責任者から「どれだけ研究効率の改善に貢献できるのか」「どれだけ省人化ができるのか」と問われます。わが社もそのような状況の中、なかなか導入のきっかけをつかむことができませんでした。

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