中古で導入コスト削減! ロボットをもっと気軽に/Sエンジ販売
機械図面も電気回路図面も一人で
Sエンジ販売は、電気材料商社に勤めていた末永社長が独立して18年3月に立ち上げた新興企業だ。「材料事業」と「エンジニアリング事業」を2本柱とし、顧客の生産現場の自動化や省人化を支援する。
材料事業は、大手商社やメーカーから商材を仕入れて顧客に販売するビジネスだ。ロボットや工作機械、駆動機器、制御機器などのファクトリーオートメーション(FA=工場自動化)機器から、作業工具や電気材料まで幅広く取り扱う。
エンジニアリング事業では、FA機器の保守やメンテナンスに加え、SIerとしてロボットシステムの構築も手掛ける。構想設計や最終調整の工程を担い、その他の詳細設計や製造などの工程は全て協力会社に外注する。構想設計は末永社長が担当し、機械図面と電気回路図面の両方を一人で描く。「機械と電気の両方の図面を描けるエンジニアは決して多くはない。機械図面を変更したら電気回路も変える必要があり、逆に電気回路を変えたら今後は機械図面も修正しなければならない。混乱しそうになるが、2つの頭をうまく切り替えながら図面を描いている」と笑う。
また、最近は海外製の安価なFA機器の輸入販売にも取り組む。
査定基準は「年式」と「最大可搬重量」
材料事業では特に、ロボットの販売に力を入れている。ファナックや安川電機、ABBなど13社のロボットメーカーの製品を取り扱い、顧客の自動化ニーズに合ったロボットを提案する。
最大の特徴は、新品だけではなく中古のロボットも販売すること。19年5月からロボット販売の事業を開始し、専用の販売サイト「ロボット販売.com」も立ち上げた。ロボット販売.com上で中古ロボットを買い取ったり、新品や中古のロボットを販売したりする。
末永社長は「自動化のニーズは高く、ロボットを導入したいと考える企業はこれからも増えるだろう。しかし、ロボットの導入コストは高い上、メーカーごとに製品の特徴も異なるためユーザーは何を選べばいいかが分からず、なかなか普及が進んでいないのが現状だ。そこで、中古ロボットによる導入コストの削減を提案し、ロボットのさらなる普及に少しでも貢献できればと考え、中古販売のビジネスを始めた」と経緯を話す。
新品と中古のロボットを扱い、エンジニアリング事業も手掛けているため、顧客のニーズに対してさまざまな選択肢を提示できるのが強みだ。中古ロボットの買い取りを希望した顧客から電気回路の設計の仕事を受注し、新規取引につなげた事例もある。
中古ロボットは、低価格で気軽に導入できるのが最大のメリットだ。また、同社は買い取ったロボットを補修した上で倉庫に在庫するため、購入希望者は倉庫を訪問すれば中古ロボットを実際に操作できる。
「問い合わせの件数は増えており、今では週に1~2回ほどの頻度で来る。『買い取り希望』と『購入希望』の比率は半々ぐらいで、買い取りは自動車業界などが多いが、購入の方はロボットを低価格で気軽に購入できるからか、意外にも企業だけではなく個人や教育機関からの問い合わせも多い」と末永社長は語る。
「中古」と聞くと、やはり気になるのは査定基準だろう。同社は買い取りの際、ロボットのどこに注目するのだろうか。
末永社長は「大きくは、年式と最大可搬質量の2つ。買い取り予定の可搬質量のロボットの平均仕入れ金額に、年式の係数を掛けて買い取り金額を算出する。後はロボットの状態で金額が上下する」と説明する。自動車の損害保険料の算出基準となる「車両価格表」を参考にし、ロボットの査定基準を独自に作成した。
基本的には、ロボット本体とコントローラー、ペンダント、付属ケーブルの一式がそろっていなければ買い取りをしない。また、ロボットを買い取る際には末永社長が全ての軸を動かし、問題がないかを確かめる。そのため、動作確認費用とロボットの輸送費が別途必要だ。しかし、ロボットが問題なく稼働する様子を動画で撮影して同社に送付すれば、動作確認費用はかからない。
末永社長は「中古販売のビジネスにはポテンシャルがあり、今後も成長が期待できる。利益率も高いが、一方で在庫を抱えすぎると財務状況が悪くなる恐れもある。そのため、手持ちの中古ロボットをどう販促するかが重要で、最大可搬質量に合ったアプリケーション(使い方)をしっかり提案したい」と意気込む。