世界でも珍しい? 中村留が機内ロボット開発/中村留精密工業
3つの切り口で開発
「従来の自動化は大量生産が前提だったが、最近は多品種少量生産の自動化ニーズも企業規模を問わず拡大している」――。中村留精密工業の中村専務は現状のトレンドをこう分析する。
同社は複合加工機と呼ばれる、複数の加工法を1台に集約した工作機械を得意とする。1台でさまざまな加工ができるため、複合加工機はそもそも多品種少量生産に強い工作機械と言える。同社は顧客の要望に沿って自社製の複合加工機と自動化機器を組み合わせたシステムを提供し、多品種少量生産の自動化ニーズに応えてきた。自動化機器の搭載比率は2018年ごろから増加傾向にあるという。
現在は①スピード②スペース③柔軟性――の3つの切り口で自動化機器の開発に努める。
①では高速ガントリーローダー、②では省スペースが特徴の「コンパクトローダー」、③ではワンタッチで工作機械に接続できる協働ロボットシステム「Plug One(プラグワン)」など、従来は分野ごとに製品ラインアップを広げてきたが、今年7月には②と③を兼ね備えたフレックスアームも発売した。
MECT2021で国内初披露
フレックスアームは、複合加工機に装着するチャック(複数の爪でワークを固定する工作機械の周辺機器)の爪の交換作業や、ワークをチャックに脱着する作業を自動化できる。複合加工機の機内で稼働し、同社では「機内ロボット」と呼ぶ。
多品種少量生産の場合、ワークを加工するたびに脱着や爪交換の作業などが必要だった。こうした作業を「段取り替え」と言うが、通常は人手でやっていた。フレックスアームを使えば段取り替えを自動化でき、長時間の無人稼働が可能になる。
「ワークの脱着、爪交換、切りくずを除去するためのクーラント噴射の3つの作業ができる機内ロボットは世界でも珍しい」と中村専務は自信を見せる。
今月20日から名古屋市港区のポートメッセなごやで開催される工作機械見本市「メカトロテックジャパン(MECT)2021」で国内初披露する。フレックスアームとプラグワンの両方を展示する計画だ。
プラグワンは複合加工機やストッカーをワンタッチで接続できる協働ロボットシステム。今年5月に発売した。工作機械にロボットシステムを組み合わせる時は通常、配線や配管の取り回しなどを考慮する必要がある。非常に時間がかかる作業なのに対し、プラグワンはレバーの操作だけで簡単に工作機械に接続できるため、わずか10分程度でシステム構築ができるという。同社のほぼ全ての機種に搭載でき、別の機械への移設も簡単だ。
中村専務は「『自動化』は主要テーマの一つ。ローダータイプのフレックスアームと、協働ロボットを使ったプラグワンの特徴に違いを見比べてもらえれば」と語る。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)