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2022.09.07

協働ロボットのブレーキ材に新素材/スターライト工業

スターライト工業(大阪市旭区、西郷隆志社長)は、協働ロボットの関節保持や緊急時の制動に用いるブレーキ材(摩擦材)として、非可食植物由来のバイオマスプラスチックを用いた新素材「X2101」を開発した。特許出願の後、昨年12月に展示会で初公開。来場者の反響や手応えを受け、量産技術の検討に入った。試作案件をこなし、3年以内の量産化を目指す。開発を主導した新歩推進ユニット先進材料開発第2チームの下川路朋紘さんは「環境に優しいプラスチックとして開発した先進材料の一つ。環境性能だけでなく、協働ロボットのブレーキ材として多くのメリットがある」と力を込める。

求められる摩擦係数は?

見た目よりも軽量な「X2101」

 スターライト工業が開発した摩擦材「X2101」は、協働ロボットの関節を保持し、停電など緊急時に制動をかけるブレーキ材として開発した。

 開発を主導した下川路さんは「ロボット業界を中心にヒアリングを実施し、摩擦係数が0.4程度で、温度変化の影響の小さいブレーキ用摩擦材の開発を目標に定めた」と話す。協働ロボットのブレーキ材にはフェノール樹脂系摩擦材を用いることが多く、摩擦係数は0.6を超えるものが多い。下川路さんの開発チームを統括する絹川智哉主事は「協働ロボットのブレーキ材には、従来の摩擦材よりもやや低い摩擦性能を求められるケースが多い。業界内を見渡しても摩擦係数が0.4程度で、かつ温度変化の影響の小さい摩擦材は少なく、開発の意義があると考えた」と言う。

 下川路さんら開発チームは、2020年に材料開発に着手した。目標とする性能と生産性の両立を図るべく、材料の選定や適切な配合比を見いだす作業だ。約1年かけて材料のレシピを確立し、21年3月に特許出願した。12月には展示会で披露し、来場者の反響や手応えも得られたため、今年に入り量産技術の検討を始めたところだ。

3つの大きなメリット

開発を主導した下川路朋紘さん(右)と、開発チームをまとめる絹川智哉主事

 X2101が協働ロボットのブレーキ材に最適な理由は、摩擦の特性だけではなく「量産性に優れる」「幅広い温度域で安定した性能を発揮する」「長寿命」の3点にある。

 従来のブレーキ材にはフェノール樹脂ベースの圧縮成形品が用いられているが、もろいため金属部品に接着して使用されることが多い。そのため重くなり、制動時の騒音も大きくなる。X2101は射出成形が可能な熱可塑性バイオマス樹脂をベースに使用するため、量産性に優れ、軽量化も期待できる。

X2101は高温時の摩擦係数の変化が少ない

 摩擦力で制動するブレーキ材は、制動をかけると発熱する。繰り返すうちに温度が高くなると材料の特性が変化し、制動力が落ちる。しかしX2101は、ブレーキ用摩擦材の課題である高温域での性能を安定させた。室温から150度の間ではほとんど摩擦係数の変化がなく、高温域でも安定した保持力や制動力を発揮する。

 さらに、従来の化石由来のブレーキ材は高温時に耐摩耗性が大幅に低下し、寿命が短くなるデメリットがあったが、X2101は150度の高温時でも耐摩耗性があまり低下しないため長寿命が期待できる。

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