[SI基礎講座vol.2] オリエンテーション②
ロボットのシステムインテグレーション(SI)に関する基礎知識は、ロボットを導入するユーザー企業の担当者にも必要だ。SIの概要を知ることでシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)と意思疎通がしやすくなり、ロボット導入が成功する確率を飛躍的に高められる。そこでロボットダイジェストでは、日本ロボットシステムインテグレータ協会の全面協力により、同協会が主催する「ロボットSI基礎講座」の内容を誌上講座として掲載。SIに必要な基礎知識を特別連載企画として紹介していく。
〔今回の講師:SI基礎講座コーディネーター 佐々木健雄さん〕
――― ――― ――― ――― ――― ―――
【今回のポイント!】
〇SIerはロボットシステムの専門家集団
〇「経営層」「導入担当者」「SIer」にそれぞれ役割
〇ユーザーも簡単な操作や復旧はできた方がよい
SIerという職業
ロボットシステムの構想、提案、構築、保守を行う専門家集団がロボットのSIerです。
ロボットをはじめ、さまざまな周辺装置を組み合わせてシステムを統合・構築します。
ロボットシステムの導入までには、経営層、導入担当者、SIerでそれぞれステップがあります。まずは経営層を中心に「自社の問題点の把握」をして、「ロボット導入の実務担当者の指名」を行います。
指名された担当者は「現状の問題点の抽出」と、まずはロボット導入を伴わない5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の推進などで「現場の改善」を行います。その上で、自動化すれば生産性の向上が見込めることなどを具体的に経営層に上申し、経営層が導入を決定。担当者はSIerにどういったロボットシステムが欲しいかを伝える「提案依頼書(RFP)」を作成します。また、経営層はロボット活用に向けた人材育成の検討なども進めましょう。
RFPができたらSIer側で、その要望に合わせて見積もりやシステム構成図などを制作します。担当者とSIerとの間でやり取りし、仕様が決まって合意形成ができればSIer側は詳細設計図面を作成し、導入企業側が承認します。また、そのロボットシステムにどのようなリスクがあるのかをSIer側から導入企業に提示し、導入企業側はリスクアセスメント(リスクの検証や対策)で運用まで含めてそのリスクが問題ないことを確認します。
続いてSIerはロボットシステムを製作し、流動確認(問題なく作業ができることの確認)や現地への搬入・設置、現地での流動確認、導入先スタッフへのメンテナンスやオペレーティングのトレーニングを行い、引き渡しとなります。
ロボットと専用機械の違い
専用機械は、汎用的には使用できませんが、特定の作業なら精度にもスピードにも優れ、扱いも比較的簡単です。
一方、ロボットはプログラム次第でさまざまな動作ができる機械です。非常に汎用性は高いですが、その分構造が複雑で扱いが難しくなります。精度やスピードは専用機械ほどではないですが、人と比べて繰り返し精度などは優れていますので、疲れることもなく、生産を安定させられます。
ロボットの力を十分に発揮させるためには、ロボットを使える人材が重要になります。SIerだけでなく、導入企業も簡単なロボット操作ができるようになる方が良いと思います。
いわゆる「チョコ停(小さなトラブルによる短時間の稼働停止)」が発生した際、そのたびにSIerを呼んでいると、費用がかかります。特に遠方のSIerだと、そのたびに出張費などがかかってしまうため、簡単なものであればユーザー企業が社内で復旧できることが望ましいです。
また、ロボットの操作を覚えれば「これができるなら、あの作業も自動化できるのでは?」と現場のさらなる改善が進むことも多いです。
――次回は「生産技術概論①」
(構成・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
※この記事は2023年9月12日~14日に日本ロボットシステムインテグレータ協会が主催した「ロボットSI基礎講座」を誌上講座として収録したものです。「ロボットSI基礎講座」の詳細情報の確認や申し込みは、同協会の公式ウェブサイトから。