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2023.06.09

[特集 工場物流を刷新せよ!vol.7 ]一巡して一段高いステージへ/日本物流システム機器協会 下代博 会長

日本物流システム機器協会は、工場や物流センターなどで使われるマテリアルハンドリング(マテハン)システム・機器メーカーの団体だ。マテハンシステム・機器の市場は年々伸びており、工場向けの引き合いや導入も増えている。過去に一部工程を自動化済みの現場でも、いま改めてシステムを刷新しようとの機運が高まっているという。「マテハン投資に対する考え方が大きく変わり、自動化が新たなステージに入った」と下代博会長(ダイフク社長)は語る。

高まるマテハンへの関心

 少子高齢化による人手不足などの影響で、工場内の物流を自動化するマテハンシステム・機器への関心が高まっている。近年、新工場の建設時や現場での業務見直しの際は、必ずと言っていいほど、マテハンも含めた自動化が検討されるようになった。将来を見据えて、自動化できる工程は自動化しておこうという認識が一般的になり、製造業向けの導入や引き合いが増えている。

 日本の製造業は1990年代~2000年代に盛んに海外進出したが、ここへきて国内回帰の機運が高まっている。要因の一つは地政学リスクの顕在化だ。また現状では、海外なら大量の人手が安く確保できるといった状況でもない。国内にしっかりと生産拠点を構えることが重要と考える企業が少なくない。

 加えて、新型コロナウイルス禍で部品不足になり、製品生産に支障をきたし、サプライチェーンマネジメント(SCM)を見直す企業も多い。特に変わったのが、在庫に対する考え方だ。以前は、部品在庫は必要最低限とし、できるだけ減らす方向が主流だった。しかし現在は、部品の安定供給のためには、従来よりも在庫を積み増す必要があると考える企業が多い。そして、部品在庫が増えれば、その保管や搬送の設備も必要になる。

 マテハンシステム・機器は、近年注目を集める工場のデジタル化、デジタルトランスフォーメーション(DX=デジタル技術による変革)とも相性が良い。上位システムとマテハンシステム・機器とのデータ連携や、モノのインターネット(IoT)化、高速化が進み、各製品に付随するデータも情報量が増えた。デジタル技術とマテハン技術を組み合わせれば高度な自動化も可能となる。

「可能なら自動化」が前提

 個人的には、製造業における自動化投資は二巡目に入ったと認識している。今日では、マテハンシステム・機器は、流通系企業の物流センターでも、製造業の工場や部品倉庫でも使われるが、マテハンシステム・機器の普及は、高度経済成長期の自動車産業や電機、化学といった製造業向けから始まった。その後、物流センターでもマテハンシステム・機器が使われるようになり、インターネット通販の普及で小口荷物の取り扱い個数が増大したこともあり、近年は小売・流通業が市場の拡大をけん引した。

 また、マテハンシステム・機器を導入する際の投資に対する考え方が以前とは全く変わってきている。以前であれば、投資を何年で回収できるか、人手で作業する場合と比べてメリットがどれだけあるかが判断の決め手だった。「人手と自動化でどちらを選ぶ方が得か」、これは人手という選択肢がある場合の考え方だ。単純な搬送など、一昔前であれば「人手でやった方が安い。人手でやった方が速い」と自動化されなかった作業でも、今は自動化するケースが増えている。そもそも、製造現場における人手が足りないことが原因だ。自動化できる作業は自動化することが前提となり、貴重な人員は自動化できない作業に振り向ける。過去にマテハンシステム・機器を導入済みの企業でも、残った工程を見直し、さらなる自動化を図り始めた。従来型の自動化投資が一巡して、もう一段高い新たなステージの自動化投資が出てきている。

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