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2020.08.07

[5日間の夏期集中講座vol.5]ここだけは押さえたい!産業用ロボットのきほんの「き」/ロボットの歴史

米国で生まれ日本で発展

 産業用ロボットの歴史は50年代、米国から始まった。54年にジョージ・デボル氏がティーチング(ロボットに覚えさせること)した動きを再生する装置を考案し、今日の産業用ロボットの礎を築いた。

 その後、58年にはコンソリデイティッド・コントロールズが産業用ロボットの試作品を発表し、59年にはユニメーションが産業用ロボット「ユニメート」を発売した。62年にはAMFも円筒座標型ロボット「バーサトラン」を発売した。いずれも米国の企業だ。
 ユニメーションは、デボル氏と事業家のジョセフ・エンゲルバーガー氏が共同で設立した世界初の産業用ロボットメーカー。エンゲルバーガー氏は「ロボットの父」とも呼ばれる。
 米国では当時、人件費が高騰しつつあり、自動車工場などで自動化や機械化の需要があった。こうした時代背景の中で産業用ロボットが生まれ、米国を中心に自動化が進んだ。

米国ユニメーションと提携して国産化した「川崎ユニメート2000型」(川崎重工業提供)

 一方、日本での産業用ロボットの歴史は60年代からスタートした。当時は高度経済成長期で、自動車の需要が急激に増加していた。そのため、自動車メーカーの工場を中心に、米国製のスポット溶接用ロボットの輸入が始まった。
 日本でのロボット生産が始まったのは68年。プレス機械メーカーの会田鉄工所(現アイダエンジニアリング)が工業用ロボット「オートハンド」を発表した。川崎重工業も同年に米国のユニメーションと技術提携し、翌年には油圧駆動式の産業用ロボット「川崎ユニメート2000型」の国産化に成功した。

 70年代に入るとその他の企業も産業用ロボットの市場に参入し、研究開発が活発化した。71年には日本ロボット工業会の前身となる任意団体「産業用ロボット懇談会」が設立された。

1979年に発売されたASEA(現ABB)の電動式スポット溶接用ロボット(ABB提供)

 当時のロボットは油圧駆動式が主流で、自動車ボディーなどのスポット溶接に用途が限定されていた。しかし、80年代に入ると電力を動力源とする電動式のロボットが登場し、組み立てや搬送などの多様な工程にもロボットを導入されるように。従来の自動車産業だけではなく、機械産業や電子部品産業にも需要が広がり、ロボットの普及が急速に進んだ。

 日本のロボットメーカーも電動式のロボットを次々と製品化し、ロボットの普及を後押しした。やがて日本は「ロボット大国」の地位を確立し、今では世界全体の新規ロボット設置台数のうちの約半数は日本製が占めるまでになった。

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