日本法人のファンを作る【後編】/ABB中島秀一郎社長
ABBの技術+日本法人ならではの価値
――前編でも話が出ましたが、日本市場にはライバルも多くいます。その中で、どのような経営を目指しますか?
ABBの日本法人は、サッカーなどの日本代表のようなものだと考えています。2006~07年に日本代表監督を務めたイビチャ・オシム監督は、「日本サッカーの日本化」を掲げました。海外のものをそのまま持ってくるだけでなく、日本に合うようにローカライズし、独自の付加価値を付けなければいけません。それはわれわれも同じだと思います。ABBの技術力の高さや製品に魅力があるのは大前提ですが、その上でアフターサービスやプロジェクトマネジメントなどで日本法人の「ABB株式会社」が選ばれるようになりたい。「ファンを1人1人増やす」、これが私の目標です。
――具体的な取り組みとしては、何をしますか?
ABBの日本法人は「面倒見がいい会社、諦めない会社」です。自社にシステム構築も含めたノウハウがあり、技術的に難しい案件でも手を引かずに何とか実現までこぎつけます。しかし、それだけでは足りないと考えています。われわれはロボットシステムの導入が終われば一段落と考えがちですが、ユーザーにとってはそこが始まりです。日々運用する中で徐々に信頼感が生まれ、やがて愛着を抱きます。その工程にも、積極的に関わっていければと考えています。手段としては他社とあまり変わらない「導入後の定期訪問」だとしても、その質を変えたい。ABBはデジタル技術を使った遠隔サービスも充実していますが、それらはツールでしかありません。ツールを使いこなすのは人です。最終的には、サービスの質は人に左右されます。
――目指すサービスとは?
学生の頃、一流ホテルでアルバイトをした経験があります。また、たまに良いホテルに泊まることもありますが、一流ホテルのサービスは、自然でいやらしさがありません。そういうサービスを提供したい。ホテルのサービスとロボットのアフターサービスは別物ですが、学べる部分はたくさんあります。それができれば、一夕一朝では決して真似できないABB日本法人ならではの価値になります。幸い、ABBは人材には恵まれています。全員人柄もよく、付き合っていけば良さを分かってもらえると思います。その強みを生かし、「効率的」ばかりでなく、顧客からの信頼獲得のための「効果的」なサービスを提供していければと思います。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
中島秀一郎(なかじま・しゅういちろう)
1998年東京大学大学院工学系研究科修了、ABB入社。2013年から塗装機事業統括部長として、日本国内をはじめ、欧州、中国、中近東、米州で、新規事業の立ち上げや既存事業の立て直しなど幅広い業務を経験。15年から国内のロボティクス事業を統括、19年ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部長に就任。20年9月から現職。東京都出身の49歳。
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