ドイツのロボット展に見る最新自動化提案【前編】/automatica 2023
ABBは高柔軟性のライン提案
KUKAと並ぶ欧州2強ロボットメーカーのもう1社がスイスのABBだ。ロボット部門を統括するマーク・セグーラ氏は「次世代の要求に合致する柔軟な自動化が必要。特に中小企業でも使える自動化が最も重要なテーマになる」と強調する。
今回展の注目ポイントはいくつかあり、1つ目は可搬質量が70㎏~310㎏の大型ロボットのラインアップを拡充したことだ。それぞれ従来品に比べて、リーチを伸ばしつつも可搬質量を上げるという矛盾する課題を克服した。2つ目は、好評の協働ロボット「GoFa(ゴーファ)」に可搬質量10㎏と12㎏の2機種を新たに追加し、人間が持って重いと感じるくらいの物の搬送を可能にしたことだ。
展示会場でのハイライトはEV用バッテリーケースの生産現場を想定した「オムニバンス フレックスアーク」の展示だろう。自律走行型搬送ロボット(AMR)による素材の搬送、垂直多関節ロボットによる位置決めや溶接が一体となった自動化セルを展示した。自動車部門の責任者であるヨルグ・レジャー氏は「このシステムは拡張や変更が容易で、多品種の混流生産にも柔軟に対応できる。例えば、バッテリーEVだけでなく、プラグインハイブリッド車の部品やハイブリッド車の生産も同一設備で柔軟に組み替えて対応できるのが強み」と胸を張る。
レジャー氏は「EV市場はさまざまなプレーヤーが続々と参入してきて本当にエキサイティング。環境対応については、特に若い世代からのプレッシャーが厳しいことが、誇らしく、素晴らしい」と言う。その他にも、教育用の協働ロボットシステムのパッケージやロボットの経路を干渉回避しながら自動生成するソフトウエアなどを展示した。
-
ABBは現実の生産現場を模した自由度の高いセルシステムを提案
協働ロボの新たなステージ
デンマークのユニバーサルロボット(UR)は20㎏可搬の長リーチ協働ロボット「UR20」を披露した。可搬質量をアップさせるために関節部分の機構を一から再設計したという。
また、独自開発のオペレーティングシステム(OS)「PolyScope(ポリスコープ)」の最新版「PolyScopeX」も披露した。新OSはマシンテンディング機能を強化したものだ。プログラムのしやすさやオペレーターにとっての現場での使いやすさなど、細かいが重要な点を改良した。トレーニング用の動画を見て練習すれば誰でもすぐに使えるようになると言う。展示会場では米HURCO製のCNC旋盤やDMG森精機のマシニングセンタを使ったローディング・アンローディング(部品素材の取り付け・取り外し)のデモを展示した。
ストラテジー&イノベーション部門バイスプレジデントのアンダース・ベック氏は「昼間は人が工作機械を使い、夜はロボットに作業させればいい。人手不足が深刻なドイツではとにかく使い勝手を良くしなければならない」と言う。
新開発の自動溶接システムも展示した。ベック氏は「溶接は必ず伸びる分野。人手が慢性的に不足しているにも関わらず品質要求が厳しい。そもそも1mの長さをきれいに溶接するのは非常に高いスキルが求められる仕事」と指摘する。こちらも半日程度のトレーニングですぐに使えるシステムだ。「ロボットはアプリの時代。機能も重要だが、それ以上に、顧客の現場にぴったりとはまる提案ができるかどうかにかかっている」(ベック氏)。
ストーブリは大型の垂直多関節ロボとAMRを連動させた
高級ブランドで知られるスイスのストーブリはEVの大型バッテリーケースの搬送をデモした。同社の可搬質量170㎏、最長リーチ2209mmの垂直多関節ロボット「TX2-200」と可搬質量3tのAMR「PF3」を組み合わせた。その他、溶接や、スカラロボットによるバッテリーパックの組み立てなども幅広く提案した。
台湾のテックマンロボットは同社最大となる可搬質量25㎏の協働ロボットを初披露した。6月末から順次出荷を始めたという。展示テーマは「AIコボット」。組み立てや傷の検出、部品の分類や数量のカウントといった機能を充実させた。
中国のメックマインドのブースでは、独自開発のビジョンシステム「Mech Eye UHP-140」を使って、部品に開けられた穴のセンター位置を人工知能(AI)で特定する技術が注目されていた。穴の輪郭線を独自のアルゴリズムで算出し、最大径の交点から中空上の中心線を割り出す仕組みだ。
(ロボットダイジェスト編集長 八角秀)
――後編に続く
-
テックマンは同社最大となる25㎏可搬の協働ロボを出展
-
独自のビジョンセンサーで知名度を上げる中国のメックマインド