世界の猛者。ABBが食品分野に注力するワケ【その3】/ABB中島秀一郎ロボティクス事業部長
展示会でロボットを展示しないことも
――どのような考えでロボットを導入するのが良いのでしょうか。
人の作業の単純な置き換えではなく、ロボットを導入する現場をロボットに最適な環境に変え、その前後工程も含めて設備を入れ替えるお客さまは、ロボットの導入効果が高いです。私たちが言うのも変な話ですが、ロボットに期待しすぎても駄目です。また、ロボット単体だけで高い導入効果を得られる、ということもほとんどありません。そういった、ロボット活用に対するお客さまへの啓もう活動はまだまだ必要です。
――啓もうでは展示会が大きな役割を担うと思います。何か出展方針はありますか。
当社は食品関係の展示会に出展しても、ロボットを設置しない時もあります。その場合、ピッキングの事例動画やシミュレーションソフトを中心に紹介します。本当にお困りのお客さまは、ロボット本体以外にも高い関心を持って展示会に来ると考えています。具体的に何をどうしたい、との考えをお持ちの方々は、導入事例に強く関心を持つ。そういった動画中心の展示で興味を持たれたお客さまは、比較的短い期間でロボットの導入に至っています。
――行政の支援はいかがですか。
補助金の活用法は、もしかしたら工夫の余地があるかもしれません。繰り返しになりますが、食品業界のピッキング作業ではハンドがとても重要で、テストや新規開発が不可欠です。その費用は当社でもSIerでも無償の場合があります。大した額には見えないのかもしれませんが、実のところ、メーカーやSIerなどにとっては決して安いとは言えない金額です。ここに補助金を適用できれば、ハンドを開発しやすくなる。しかも補助金が付けば、活用事例を公表しなければなりません。ハンドのアイデアやノウハウの公表により、業界全体で食品向けハンドの開発力が底上げされる。公開された画期的なアイデアに影響を受け、また新しいアイデアが生まれる。そのアイデアを基にまた……。このように次々に発展していく豊かな流れができるのではないでしょうか。
――本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
ABBは食品分野だけではなく、幅広くロボットソリューションを提供しています。また別の機会にお目にかかれたら幸いです。ありがとうございました。
――終わり
(聞き手・編集長八角秀)
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