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2019.09.10

製造業にとってAIは必然【後編】/武蔵精密工業

ギアなどの自動車部品を製造する武蔵精密工業は今年、人工知能(AI)システムの外販に乗り出す。自社設備として研究開発してきたAI外観検査システムなどを販売する。「製造業がAIを取り入れるのは必然。今のパソコンのように、10年後にはどの企業も当たり前に使うものとなる」と大塚浩史社長は言う。後編では同社が開発するAI応用製品などを紹介する。

検査と搬送にまずAI

「対価が得にくい工程にAIを」と話す大塚浩史社長

 同社がAIによる自動化をまず提案するのが、検査と搬送の工程だ。

 「ざっくり言えば工場の労力の2割を搬送、6割を加工、残る2割を検査が占める。加工は付加価値を高める工程で対価が得られるが、搬送と検査は付加価値を生みづらい。まずはここからAIで自動化する」と大塚社長は話す。

社外で実証実験を開始

 検査工程向けにはAI画像検査システムを外販する。AIを使った製品表面の傷などを発見するシステムだ。これは自社で既に使用実績のあるもので、自動車部品メーカーの日鉄精圧品(愛知県半田市、川上浩一郎社長)の工場にも今年納入し、実証実験を開始した。実証実験の結果は現在のところ良好で、今年中に本格販売を開始する。既に引き合いも複数あるという。

 同社の自動車部品(ベベルギア)の不良発生率は0.002%。ほとんど発生しない不良品を探すのは、負荷が高い作業と言える。また、「検査を担当するのは、信頼できる仕事をしてくれる優秀な人。そういった人材は現場の改善や加工条件の研究など、付加価値を高める仕事をすべき」と大塚社長は話す。

  • 自社での使用実績もあるAI外観検査装置

  • 武蔵精密工業が製造するベベルギア

ユーザー視点で搬送車開発

屋外で使える搬送車も開発する

 搬送では、AIを使った自律走行車(セルフ・ドライビング・ビークル、SDV)を開発する。工場内でワークを運搬する屋内用だけでなく、屋外のトラックまで荷物を迎えに行く屋外型も開発する。
 AIを活用することで車両が自らの位置を把握し、自律的に目的地までのルートを作成できる。将来的には天井から複数の車両の位置をチェックし、一つのAIで全体を最適にコントロールするシステムなども開発する。

ユーザー視点で開発した自律走行車

 「屋内用の無人搬送車は多くの企業が発売するが、汎用性が高い代わりにとても高価。自動車産業では部品などを入れる箱の寸法は決まっており、汎用性は要らない。そうしたターゲットに的を絞り、ユーザーならではの視点で求めやすいSDVを開発する」と大塚社長は意気込む。
 発売は2020年を予定する。

「当たり前の産業インフラになる」と話す大塚社長

 検査と搬送をAIで自動化した後は、加工のさらなる高付加価値化にもAIを活用する。
 切削で言えば一つの被削材に対しても加工条件は無数にあり、切削工具の刃先の形状をわずかに変えるだけで加工効率が変わることもある。
 「たくさんの組み合わせの中から最適なものを見つけるのはAIの最も得意とするところ」と大塚社長は話す。

 さまざまな工程に対応するAIシステムが出てくることで、「AIは今後10年で、現在のパソコンのようにどこの企業でも使う当たり前の産業インフラになるだろう」と大塚社長は予想する。

――終わり
(編集デスク 曽根勇也)


※この記事の再編集版は「月刊生産財マーケティング」2019年9月号でもお読みいただけます。

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