[SIerを訪ねてvol.10] 3Dばら積みピッキングで注目集める新会社【後編】/トキワシステムテクノロジーズ
「すぐにでも」との連絡も
TSTが得意とするのは、独自の画像処理技術を駆使した3Dばら積みピッキングのシステムだ。
ばら積みピッキングとは、トレーの中にばらばらに積まれた部品をロボットが認識し、ピッキング(部品を取り出すこと)する作業を指す。
TSTはばら積みピッキングシステムの技術開発を手掛け、営業活動は親会社の常盤産業(名古屋市中区、清水英敦社長)が担う。両者は二人三脚で同システムのPRに努め、特に展示会には積極的に出展する。展示会での新規の引き合いは非常に多く、2019年7月下旬に東京で開かれた展示会では、優先度の高い具体的な案件だけで3桁近くの引き合いを獲得した。
「深刻な人手不足を背景に、多くの企業が興味を持ってくれた。中には『すぐにでも取り組みたい』と声をかけてくれる企業も」と清水社長は胸を張る。
4つの大事な要素
展示会などでは最近、TSTに限らずさまざまなSIerやロボットメーカーがばら積みピッキングのデモを披露する。
だが、TSTの今井社長は「実用レベルのシステムが展示されているかと問われると必ずしもそうではない。ばら積みピッキングに強みを持つSIerが少ないだけに、わが社のシステムが来場者から大きな注目を集めている」と分析する。
70年以上の歴史
TSTは18年2月に設立したばかりの新会社だが、親会社の常盤産業の創業は1947年で70年以上の歴史を持つ。
地元愛知県に集積する自動車産業の顧客向けに、これまで数多くの工場の自動化(ファクトリーオートメーション、FA)関連の設備を提供してきた。特に、組み付けの工程や搬送の工程を自動化する設備を得意とし、顧客のニーズに応じてロボットも活用した。
FA関連の設備を製作する中で、常盤産業の清水社長はロボットを使った3Dばら積みピッキングのニーズに目を付けた。だが、技術的に難しく「今後の普及の可能性を感じつつも、わが社だけの力ではどうにもならなかった」という。そこで、ばら積みピッキングには欠かせない要素技術である画像処理やロボット制御に知見のある今井社長を迎え入れ、グループ会社としてTSTを設立した。
清水社長は「今井社長が来てくれたのは、まさに渡りに船だった」と振り返る。
来年はAI、再来年は協働ロボット
TSTは会社設立からの1年半で急速に成長してきたが、この急成長に甘んじることなく、今後もさまざまな技術の研究開発に力を注ぐ考えだ。
今井社長は「来年は人工知能(AI)、中でもディープラーニング(AIの要素技術の一つ)の研究に注力する。そして、再来年にはAIと画像処理の技術を生かし、双腕型の協働ロボットを使った部品の組み立ての自動化システムを開発したい」と展望を述べる。
一方、常盤産業では、営業担当の人員拡充や人材育成に取り組む。清水社長は「3Dばら積みピッキングシステムは、参入障壁が高いため、利点は大きい。しかし、誰でもやれるわけではないからこそ営業担当の育成には時間がかかる。難しいが、地道にやっていくしかない」と説明する。
この他、同業のSIerやFA装置メーカーなどと手を組み、販路の拡大にも努める。「自分たちの力だけでは限界があるので、同業他社とも手を組みながら顧客に喜んでもらえる製品を提供したい」と清水社長は語る。
――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)