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2025.03.05

[注目製品PickUp!vol.78]試料の調合・希釈に自動化を提案/アラインテック「LRS」

システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のアラインテック(山口県岩国市、上田文雄社長)は、研究開発分野における試料の調合、希釈の自動化システム「LRS」を開発、販売する。ラボラトリーオートメーション(実験作業の自動化)にターゲットを絞り、その中でもひょう量など研究者にかかる負担が大きい作業を自動化する。ロボットでは難しいデリケートな作業には自社開発の専用機を使い、人が介在する余地を可能な限り削減した。今後は対応する業界の拡大を目指す。

試料の希釈・調合を自動化

 アラインテックの「LRS」は研究開発施設向けのロボットシステムで、製品や試作品の分析に使う試料の希釈や調合を自動化する。
 製品名はLaboratory Robot System(ラボラトリー・ロボット・システム)の略。6軸垂直多関節ロボットに加えて、メスフラスコの開閉栓機や、試料を自動で量り取る「計り取りユニット」など複数の自社開発の専用機で構成される。
 「メスフラスコとふたはガラス製で扱いに非常に気を使う。6軸垂直多関節ロボットによるメスフラスコの開栓・閉栓は難しいため、自社開発の専用機を使った」とLRSの開発に携わった開発部の山田憲克課長は言う。

LRSは試料の希釈や調合を自動化する

 LRSは①メスフラスコの開栓②試料の吸い取り、吐き出し③試料の希釈、調合④希釈した試料の混合⑤メスフラスコの閉栓――を自動化する。

 具体的にはまず6軸垂直多関節ロボットが、試料の移し替えに使うホールピペットを計り取りユニットに装着する。その後、ツールチェンジャーでハンドを付け替え、試料の原液が入ったメスフラスコと空のメスフラスコを開閉栓機へ運ぶ。
 開閉栓機でそれぞれのメスフラスコのふたを開けたら、計り取りユニットの下に置く。原液が入ったメスフラスコから空のメスフラスコに規定量の原液を移す。原液を移したメスフラスコを、溶媒を注入する専用機に運び溶媒を注いで希釈する。
 希釈したメスフラスコを開閉栓機に運んで栓をしたら、ロボットがメスフラスコを逆さにして何回か回すように振って混ぜる。その後、中を混ぜたメスフラスコからサンプルを分析用のサンプル瓶に入れ、開閉栓機でサンプル瓶のふたを閉めたら作業が完了する。

 専用機は全てアラインテックが設計、製造するため、顧客の要望に合わせて試料のろ過機能を付けることや、メスフラスコのストッカーを増設して夜間運転仕様にするといった柔軟な対応ができる。また、液体だけでなく粉体の調合にも対応する。

思わぬ評価点

LRSはメスフラスコの標線に合わせて自動で溶媒を注げる

 「顧客からは精度のムラがなくなることが評価された。発売前は人手不足の解消をアピールポイントにしていたため、精度面の方が評価されたのは意外だった」と山田課長は明かす。
 試料の調合、希釈作業には高い精度が求められる。溶媒の投入量が少しでもずれてしまうと研究結果が参考にならなくなってしまう。調合や希釈は神経を使う作業のため研究者にかかる負担が大きいだけでなく、精度にムラが生じる懸念があった。

 LRSはカメラや複数のセンサーを駆使することで、標線(目盛り)に合わせて試料や溶媒を自動で入れられる。
 「メスフラスコのような透明な物体の存在を認識させるのに苦労した」と山田課長。「制御装置にプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)を使ったり、多数のセンサーをシステムに組み込んだりするアプローチは、ファクトリーオートメーション(FA=工場自動化)に長年携わってきた当社ならではだと思う」と胸を張る。

狙うはブルーオーシャン

LRSの開発者の一人である開発部の山田憲克課長

 LRSを発売したのは2019年。顧客から研究開発向けの自動化システムを要望されたわけでなく、大手ロボットメーカーから研究開発の分野がブルーオーシャンと聞き、開発をスタートした。これまでリピート品をパッケージ商品にすることはあったが、パッケージ商品として1からシステムを開発するのはLRSが初めてのことだった。

 新型コロナウイルス禍の時期は化学業界からの受注が中心だったが、コロナ禍が明けてから展示会に出品するようになり引き合い件数が大きく増えた。「来場者からは食品業界や自動車業界などでも活用ができないかとの声が多く聞かれた。展示会を通じて、研究開発分野にはまだまだ需要が眠っていると認識した」と山田課長は話す。

 対象とする業界の拡大を狙うだけでなく、製品の改良にも力を入れる。従来よりも多様な粉体の高精度な計量を可能にした改良モデルを今年7月に開催される展示会で披露する予定だ。他にも、全長が短く周囲に干渉(接触)しにくい電動ピペットとPLCを無線通信のBluetooth(ブルートゥース)でつなげられるように改良した。
 「顧客の要望に合わせて専用機を作るなど柔軟なカスタマイズができるのが強み。いずれは顧客自身でティーチングができるよう改良を進めたい」と山田課長は意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

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