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2019.09.20

活用事例

「人と機械の共生」で自動化/安川電機

安川電機は2018年7月、埼玉県の入間事業所内に「安川ソリューションファクトリ」を完成させた。デジタルデータの活用でより生産性を高める「「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」の考え方を具現化した工場だ。「モノのインターネット(IoT)やビッグデータ、人工知能(AI)などの技術を使い、生産性は3倍、リードタイムは6分の1を実現した」と白石聡工場長は言う。

設備をつなぎ「見える化」

設備や生産状況のデータを1カ所に表示する統合指令室

 入間事業所は小型のサーボモーターとサーボアンプの製造拠点。従来からの第1、第2工場に加え、昨年7月にソリューションファクトリが完成し、12月から本格稼働した。
 ソリューションファクトリは2階建てで延べ床面積は7642㎡。サーボモーターとサーボアンプの「Σ(シグマ)-7シリーズ」を生産する。生産能力は月産10万台。

 アイキューブメカトロニクスのコンセプトを実証するモデル工場の位置付けで、IoTサービスの核となるソフトウエア「YASKAWA Cockpit(安川コックピット、YCP)」を導入。各設備をネットワークでつなぎ、稼働データなどをYCPに集めて解析することで、生産設備の状態監視や故障予知を可能にした。YCPは統合基幹業務システムや製造実行システム、ビッグデータを保管するサーバーとも連携できる。

変種変量に柔軟に対応

作業ステーションの中では自社のロボットが稼働する

 工場内では産業用ロボットが約30台、無人搬送車(AGV)が18台稼働する。「ロボットメーカーが作った最新工場」、そう聞くとあらゆる作業が自動化された、ほぼ人がいない工場を思い浮かべがちだが、この工場はそうではない。
 従来の3分の1の少人数で生産できるが、むしろ「人による作業の余地をあえて残した」ことが大きな特徴と言える。

 モーターでもアンプでも、組み立て工程ではサイズを統一した作業ステーションを工程ごとに設置。それらを並べることで自動化した生産ラインを構築する。

ステーション間に隙間を持たせた生産ライン

 各ステーションはコンベヤーなどで結んでいるが、作業ステーションの間にあえて隙間を設け、工程間に人が入れるようにした。これで、組み立てに一手間必要な特殊仕様の製品にも対応できる。

 また、従来のモーターの組み立て工程では部品の投入も自動化していたが、その工程はあえて人手に戻した。製造する製品に合わせて人が部品をそろえて投入する。これで1個からの生産にも柔軟に対応できる。
 部品投入後はロボットが自動で組み立てる。段取り替えでのジグ交換も垂直多関節ロボットがするため、ラインを止めることなく生産品種を切り替えられる。

「これらの生産設備は第3世代」と話す白石聡工場長

 同社にとって、ソリューションファクトリの生産設備は「第3世代」と言う。
 第2世代の設備は完全自動化を目指したもので、「もっと省スペースだったがメンテナンスがしにくく、変種変量生産にも対応しにくかった。第3世代の設備なら、変種変量生産に柔軟に対応できる」(白石工場長)。

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