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2020.09.24

連載

[注目製品PickUp! vol.28]目に見えるイノベーション【前編】/B&Rインダストリアルオートメーション「SuperTrak/ACOPOStrak」

工場内の物流革新に活用できる製品がある。オーストリアの自動制御機器とソフトウエアの総合メーカー、B&Rインダストリアルオートメーション(B&R)が発売するリニア搬送システム「SuperTrak(スーパートラック)」と「ACOPOStrak(アコポストラック)」だ。従来はコンベヤーに頼っていた工場内物流に変革をもたらし、さらには「多品種少量生産のあり方まで変える可能性を持つ」(小野雅史日本法人社長)という。

2つのリニア搬送システムを相次いで発売

 産業用パソコン(PC)などの制御機器や制御システムの総合メーカーB&Rは、2016年にスーパートラック、18年にアコポストラックの新バージョンを発売した。
 可搬質量が大きく、大物の搬送に向くのがスーパートラック。もう一つのアコポストラックは防水性や防じん性が高く、小物の搬送に向く。

 日本法人(横浜市西区)の小野雅史社長は「工場内や倉庫内の搬送のみならず、工程内や産業機械内部での搬送も根底から変えるポテンシャルを持つ製品」と胸を張る。

リニア搬送システムの強み

可搬質量が大きく、大物の搬送に向く「スーパートラック」

 工場内搬送でよく使われるベルト式やローラー式のコンベヤーは、機上にある搬送物全てを同じ速度で移動させることしかできない。

 一方、リニア搬送システムは磁石の極同士の引き合いと反発を利用して搬送台を移動させる。搬送台を個別に制御することで、搬送物一つ一つを異なる速度で扱える。

スーパートラックの搬送台の裏側。中央の部品が永久磁石。

 スーパートラックとアコポストラックは共に、搬送台に永久磁石を搭載し、軌道を構成するきょう体側に電磁石を内蔵する。電磁石のS極とN極を入れ替える制御により、搬送台を動かす。

 電源を切ると電磁石も磁力を発生しなくなるが、それでも搬送台が落下しないように構造を工夫した。

重量物向けのスーパートラック

スーパートラックの稼働の様子

 スーパートラックは重量物を扱えるのが特徴だ。搬送台1つの最大可搬質量は10kg。位置制御の精度は±10µmを保証する。

 現行モデルは第3世代で、初代の開発から16年がたつ。更新するたびに、可動部品の小型化や接触部品の摩耗の軽減など、ハード面を見直してきた。
 「重量物を扱うため、消耗が激しいと思われることが多い。しかし搬送台と軌道が接触するローラー部も耐久性が高く、定期交換が必要な部品は4つに限定。メンテナンスの手間を省く方法は常に考えている」と小野社長は話す。

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