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2020.11.04

ビジョン2030を発表、ロボットが発展支える/川崎重工業

川崎重工業は11月2日、2030年に目指す将来像をまとめた「グループビジョン2030」を発表した。「次の社会へ、信頼のこたえを」を掲げ、その将来像に合わせた組織改編なども発表した。ロボット関係では、「ウィズコロナ、アフターコロナ社会を支え、川崎重工の発展も支えるのがロボット。売上げで寄与するだけでなく、シナジー効果で他事業の競争力も高める」と橋本康彦社長は述べた。

安全・安心に貢献

 川崎重工がビジョン2030で掲げた今後の重点領域は「①安全安心リモート社会」「②近未来モビリティー(人・モノの移動を変革)」「③エネルギー・環境ソリューション」の3つ。ロボットが特に深く関わるのが、①と②だ。

2019年の国際ロボット展で展示した遠隔操作のデモシステム(提供)

 「安全安心リモート社会」では、ロボットと遠隔操作技術を活用し、誰でも遠隔で働ける社会を目指す。
 「現状では、製造や物流、医療の現場で働く人は、リモートワークができない。ロボットと遠隔操作技術により、あらゆる仕事を遠隔でもできるようにしたい」と橋本社長は話した。

 製造業向けでは研磨や塗装を遠隔でする技術を紹介。「技能者の動きを学習すれば、一品一様の製品にもロボットを使える。国内にいながら海外工場の作業も担える。わが社は国内では人手に余裕があり、海外拠点は人手不足なので、自社でも使う」と橋本社長は話す。

川崎重工業が開発したPCRロボット検査システム

 医療分野には、入院患者に食事を運んだり、各種ケアを遠隔でする移動式ロボットシステムを提案する。当初は新型コロナウイルス対策として考えていたが、病院の現場からは「コロナ禍に関係なくこうしたシステムは必要」との評価を得たという。

 また、遠隔でも手術ができる国産初の手術ロボット「hinotori(ヒノトリ)」が8月に製造販売の承認を取得。
 新型コロナウイルス対応のPCRロボット検査システムも、11月にデモ検査を開始したと紹介した。「PCR検査のロボットシステムを量産すれば、1日に100万人でも検査できる。人の移動を早期に回復したい」と橋本社長は語る。

自社技術の組み合わせで物流を無人化

物流の全自動化を提案する映像を披露した

 「近未来モビリティー(人・モノの移動を変革)」では、ロボットとモビリティー(オフロード四輪車など)、無人ヘリコプターなどの技術を組み合わせ、全自動物流システムを提案する。

 倉庫の棚から製品を集荷するピッキング作業をアーム付きの移動式ロボットが担当。届ける品物を搭載した搬送ロボットを、顧客の家の近くまで無人ヘリで運ぶ。そこから顧客宅の玄関までは搬送ロボットが自律走行して届けるイメージ映像を披露した。

「インターネット通販などにより物流需要が増えているが、わが社の技術を組み合わせれば無人化も実現できる」(橋本社長)。

3つの事業グループに再編

3つの事業グループに再編、ロボットは「モーションコントロール&モータービークル」に含まれる

 ビジョン2030を実現するための組織改編も発表した。
 現在は6つのカンパニーで構成するが、水素エネルギー事業を推進するため、エネルギー・環境プラントカンパニーと船舶海洋カンパニーを21年4月に統合する。鉄道車両を製造する車両カンパニーは21年10月をめどに分社化し、航空機などを製造する航空宇宙システムカンパニーとの連携を強化する。モーターサイクル&エンジンカンパニーも21年10月をめどに分社化し、ロボット事業を担う精密機械・ロボットカンパニーとの連携を強化する。

 これにより、「エネルギー&マリンエンジニアリング」「陸・空輸送システム」「モーションコントロール&モータービークル」の3つの事業グループに再編する。

 また、成長分野や新規分野に投資するとともに、カンパニーの枠を超えて人材を流動化させ、能力や役割、成果に重きを置いた人事制度にシフトする。こうした取り組みにより売上高を年平均成長率5%で成長させ、2030年に2兆5000億円の売上高を目指す。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)




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