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2021.03.05

ロボットを事業の柱に、アプリケーション提案で国内市場深耕【前編】/セイコーエプソン内藤恵二郎執行役員

セイコーエプソンは、スカラロボットで世界トップシェアを誇るロボットメーカーだ。プリンター事業などと比べると売り上げ規模は小さいが、中期経営計画では「ロボティクス事業を主柱事業に成長させる」と掲げ、生産・販売体制を強化する。新型コロナウイルス禍にあってもロボティクス事業は好調で、売上高は2020年度第2四半期(7~9月)、第3四半期(10~12月)と連続で前年同期比増を達成した。昨年の4月にロボティクスソリューションズ事業部長に就任した内藤恵二郎執行役員に、直近の取り組みを聞いた。

5G投資、巣ごもりニーズが追い風に

スカラロボットでトップシェアを誇るセイコーエプソン

――ロボティクスソリューションズ事業が好調です。
 20年度の第2四半期に続き、第3四半期の売上高も前年同期比で大幅に増加しました。地域別では中国で受注が伸び、産業分野ではエプソンが得意とする「3C(コンピューター、コミュニケーション=通信機器、コンシューマーエレクトニクス=家電)」に加え、太陽電池やリチウムイオンバッテリーの組み立て用途も好調でした。

――新型コロナウイルス禍の影響は?
 3C分野への影響は限定的で、次世代移動通信規格である5G関連の投資は活況です。さらに、仕事ではウェブ会議システム、プライベートでは動画配信サービスなどを利用する人が急速に増え、サーバー増強のための投資も伸びました。今年度だけかも知れませんが、コロナウイルスの抗体検査機や医療用手袋の製造設備など、医療分野からの受注も増えました。高い精度が求められる点で、医療分野と3C産業のニーズは近いのかもしれません。また、人が密集していた製造現場にロボットを導入し、密度を下げたいとの新しいニーズも出てきました。コロナ禍だからこそロボットの持つ価値が鮮明になり、「ロボットを通して社会に貢献できる」と実感することで社員の一体感も高まりました。

ロボットでロボットを作る

「ロボットは社会に貢献できる事業」と内藤恵二郎執行役員

――確かに、コロナ禍の密集対策にもロボットは役立ちそうです。
 コロナ禍のリスク低減だけでなく、産業構造の革新や労働環境の改善にも貢献できます。セイコーエプソンでは2019年に「Epson(エプソン) 25第2期中期経営計画(19~21年度)」を発表し、ロボティクス事業の強化を掲げました。プリンター事業などと比べれば規模は大きくありませんが、事業として成長性があることに加え、「持続可能な社会の構築」に直接貢献できる事業であることも、注力する理由の一つです。毎年10%、あるいはそれ以上のペースで販売を伸ばして行ければと考えています。

――販売が毎年10%伸びると、生産体制も増強が必要です。
 生産体制の増強も進めているところです。エプソンはプリンターなどの製造では自社のロボットを非常に多く使っているのですが、実はロボットの組み立てはまだまだ人手に頼っていました。自動化に向けて各工程を検証したところ、ロボット技術の進化もあってほとんどの工程をロボット化できることが分かりました。21年から25年にかけて戦略的に投資し、「ロボットでロボットを作る工場」を構築していきます。

――ロボットの生産拠点はどこに置いていますか?
 国内に加え、中国にも生産拠点を構えています。従来、中国でしか生産しない機種、日本でしか生産しない機種など、生産機種の偏りが多くあったのですが、事業継続計画(BCP)の観点からどちらの拠点でも同じ機種が作れるように変更しているところです。また、19年度から始まった中期経営計画に加え、昨年4月にはロボット事業の根幹となる考え方を“ロボットを販売する事業”から“自動化や省力化の価値を提供する事業”へと見直したこともあり、開発や販売などさまざま面で新たな取り組みが始まっています。

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