[特集 ロボットテクノロジージャパンvol.2]世界に誇れるロボット産業拠点/大村秀章愛知県知事
メーカーとSIer、そしてユーザーが集積
――愛知県のロボット産業の現状はどんな状況ですか?
ロボット製造業の事業所数は全国1位、製造品出荷額等と従業者数は全国2位です。ロボット産業における愛知県の優位性は何よりもまず、ものづくり企業の集積地であること。製造品出荷額等は1977年以来、43年連続で日本一です。業種も多岐にわたり、輸送用、業務用などの機械製造業はもちろん、プラスチックや金属製品など、ものづくりの裾野を支える業種に至るまで、愛知県が日本一です。産業用ロボットで言えば、ロボットメーカーだけでなく、ロボットシステムの設計や構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の国内有数の集積地でもあります。
――ロボット産業の振興に注力されている
愛知県はロボット産業を、自動車と航空宇宙に次ぐ「第3の柱」として大きく育てようとしています。「産」「学」「行政」が連携して新技術や新製品を創出するため、2014年に私が会長となって「あいちロボット産業クラスター推進協議会」を設立しました。現在では、ロボットの開発側と利用側合わせて500を超える企業や団体が参加するまでになっています。研究開発から社会実装までの一貫した支援と、将来のロボット産業を担う人材の育成を通じて世界に誇れるロボット産業拠点を形成すべく取り組んでいきます。
――ロボット産業にとり愛知県はどんな地域と言えますか?
日本一のものづくり県である愛知県は、ロボットユーザーの集積地であるとも言えます。さらに、名古屋大学をはじめとして、ロボット工学などの研究に取り組む大学や研究機関も多く立地しており、企業とのロボットの共同開発が盛んなことも特徴です。この集積を吸引力とし、県外・国外からもロボットメーカーを呼び込み、県内のものづくり企業との連携を進めることで、愛知県が日本のロボット産業をけん引していければと思っています。
イノベーションと人材育成で飛躍
――愛知のロボット産業のさらなる発展には何が必要でしょう?
「イノベーションの創出」と「人材育成」が必要でしょう。ロボットの競争力強化のためには、オープンイノベーションによる、人工知能をはじめとした新しい技術の取り込みが重要です。愛知県は「Aichi-Startup(アイチ・スタートアップ)戦略」に基づき、独自のスタートアップエコシステムの形成に取り組んでいます。24年にはスタートアップの「創出」「育成」「展開」「誘致」を図るための中核支援拠点「STATION Ai(ステーション・エーアイ)」を名古屋市内にオープンし、リアルとリモートの会員合わせて1000社のスタートアップの集積を目指しています。
――人材育成はどのように?
ものづくりの現場では、人材不足という従来からの課題に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大以来、自動化や省人化が一層求められています。しかし、SIer業界では慢性的な人材不足が生じて、増加する依頼に対応しきれないのが実情です。愛知県では今年度から、SIerの人材創出を目的に高校生ロボットシステムインテグレーション競技会「高校生ロボットSIリーグ」をスタートしました。昨年開催したWRS2020とRCAP2021あいちの2つの国際大会の「競技を通じて人材を育成する」との成果を継承するものでもあります。また、愛知県では21年4月から、14の県立工業高校を工科高等学校に改称し、既にあった1校に加えて新たに6校に「ロボット工学科」を設置し、ロボット産業の技術者、技能者として活躍する人材づくりに取り組んでいます。次代のロボット産業を担う人材を育成していきます。
――初開催のRTJ2022への期待は?
産業用ロボットや自動化システムに特化した展示会ということで、ものづくり企業が集積する愛知県で開催される意義は大きい。202社、1096小間の出展があるとのことで、出展者の期待の大きさが伝わる。ポストコロナへの道筋が見えつつある中、こうしたリアルでの展示会で、ビジネスマッチングが創出されることを期待しています。ものづくり企業の集積地、愛知から発信する、日本を代表するロボットの展示会となってほしいです。
(聞き手・八角 秀、写真・長谷川 仁)
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