世界最大級のロボット展開幕! 新製品ぞくぞく/automatica2022
600社超が出展
オートマティカは2年に一度、西暦偶数年にドイツのミュンヘンで開催される世界最大級のロボット展。新型コロナウイルス禍の影響で4年ぶりの対面開催となった今回展が、現地時間の6月21日に幕を開けた。会期は24日まで。
今回展には600社を超えるロボット関連企業が世界中から出展し、欧州の来場者に新製品や最先端の自動化ソリューションを披露した。
スイスのABBやドイツのKUKAをはじめとした欧州の大手ロボットメーカーに加え、ファナックや安川電機、川崎重工業、三菱電機、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)、不二越、セイコーエプソン、ヤマハ発動機などの日本の大手ロボットメーカーも欧州の現地法人を通じてブースを構えた。
新ブランドを発表
ABBはアプリケーションセル(特定用途向けシステム)の新ブランド「OmniVance(オムニバンス)」を発表した。
オムニバンスシリーズのアプリケーションセルは、ロボット、コントローラー、ソフトウエア、ハンド、周辺機器など、用途ごとに必要な製品群がパッケージ化されたもの。組み立てが簡単で、自由度や拡張性も高い。購入後すぐに現場に導入できるだけではなく、既存の生産ラインへの組み入れやライン変更も簡単にできる。自律走行型搬送ロボット(AMR)やマテリアルハンドリング装置、品質検査機器などの外部システムとの統合も容易だ。
新しく発表されたシリーズはアーク溶接用の「FlexArc(フレックスアーク)」と、機械加工用の「マシニングセルおよびソフトウエア」の2種類。フレックスアークは専有面積14.3㎡のコンパクト設計で、最大4台のロボットを制御できる。プログラミングツールの「ロボットスタジオ」を使えばセットアップ前のシミュレーションも可能だ。
マシニングセルおよびソフトウエアは、研磨、切削加工、バリ取り、洗浄、表面仕上げなど、最大8種類のアプリケーションを実行でき、段取り替えも素早くできる。自動キャリブレーション(校正)機能と経路最適化機能を装備しており、セットアップ時間を大幅に短縮できるのも大きな特徴だ。再キャリブレーションにかかる時間は従来の3時間から10分に、高品質な表面仕上げのための動作経路の編集は2日から半日に短縮した。
同社のロボット部門のプレジデントであるマーク・セグーラ氏は「世界的な不確実性の高まり、消費者ニーズの変化に加え、かつてないほどの熟練労働者の不足に直面している。この数十年でロボット業界も随分と様変わりしたが、今後10年間でこの変化はさらに加速する」と分析。「より知的で、より適応性が高く、より機動的で、よりユーザーフレンドリーな技術を提供する」と力を込める。
20kg可搬の協働ロボを披露
デンマークに本社を置く協働ロボットメーカー、ユニバーサルロボットは協働ロボットの新製品「UR20」を初披露した。
最大可搬質量は20kg、最大リーチ長は1750mmで、いずれも同社の協働ロボットの機種ラインアップの中では最も大きい。動作スピードの速さも大きな特徴で、ツール・センター・ポイント(TCP)の速度は毎秒2mと従来比で倍増した。
関節軸の構造も一から見直し、部品点数を従来比で半減。ユーザー自身でも簡単に修理作業ができるよう保守性も高めた。
段ボール箱を平積みする「パレタイジング」や、工作機械に被加工物を供給する「マシンテンディング」、大型部品の溶接や検査などがUR20の主な用途。今回展でもパレタイジングのデモを披露し、来場者の関心を集めた。
日本支社(東京都港区)の山根剛代表は「既存機種では対応できなかったレンジにも自動化提案ができる」と強調する。
日本では来年第1四半期に受注活動を始め、第2四半期以降に順次出荷していく計画だ。
モジュールの組み合わせでさまざまなロボットを
ドイツの制御機器メーカー、ベッコフオートメーションはモジュール方式のロボットシステム「ATRO」を披露した。ここで言うモジュールとは、ある機器やシステムを構成するのに必要な機能をユニット化した部品のことを指す。
ATROにはロボットの土台として機能する「ベースモジュール」、関節軸の役割を持つ「モーターモジュール」、関節軸同士をつなぐ「リンクモジュール」の3つのモジュールがあり、これらを自由自在に組み合わせることで、単軸から7軸までさまざまなタイプの多関節ロボットを製作できる。
各モジュールには通信データや電源、エアなどを供給する機能が内蔵されており、ロボットの内外にケーブルや配管を通さなくてもロボットを稼働できる。
また、リアルタイム制御ソフト「TwinCAT(ツインキャット)」を実装した同社製の制御機器を使えば、複数タイプの多関節ロボットや同社製の他の搬送システムを同期制御できるのも大きな特徴だ。小間では複数タイプの多関節ロボットを1台の制御機器だけで同期制御するデモを見せ付け、来場者の注目を集めた。
(ロボットダイジェスト編集長 八角秀、編集部 桑崎厚史)