[活躍するロボジョvol.19] ロボットの新規事業に携わりたい/ブリヂストン 手塚晶子さん
ロボティクス事業に挑戦
ソフトロボティクス ベンチャーズは2023年1月、ブリヂストンの社内ベンチャーとして発足した。ロボットに柔軟性のある素材を使って柔らかい動きを実現するソフトロボティクスの事業化に取り組む。ブリヂストンの「ゴム人工筋肉(ラバーアクチュエーター)」の技術をロボットハンドに活用する。硬い材質のロボットハンドは、決まった形状の対象物をつかむのに向くが、食品などの柔らかい製品を潰してしまうケースがある。ラバーアクチュエーターはゴム製のため柔軟性があり、さまざまな形状や大きさの対象物を把持できるのが特徴という。
手塚さんは22年11月、ブリヂストンに入社した。ソフトロボティクス ベンチャーズは発足前で、前身にあたるソフトロボティクス事業準備室に配属された。前職の大手電機メーカーでは「技術を使って新しいことをやりたい」という思いから、新規事業の創出に関わる部署を志望した。そこで橋や水道管の保守など、人手作業の多い社会インフラに関する業務の効率化や高度化に取り組んだ。「点検など危険が伴う作業を人手でやり続けることの難しさを実感しました。そこで人にとっては大変な作業をロボットに任せた事例を調べ、単純作業などの自動化に可能性を感じました」と振り返る。そうした中でロボットを活用した新規事業の立ち上げに関わりたいと考えるようになり、ソフトロボティクスの実用化を目指すブリヂストンに入社を決めた。
業務内容は営業やプロモーションなど多岐に渡る。顧客の要望に対して、チームメンバーと協力しながら解決策を提案する。チームは約10人、他部署と兼任する社員も含めると30人ほど。「立場や役割で区別せず、メンバーそれぞれが自由に発案して議論しています。新しいことに挑戦したい自分に合った環境です」と話す。
「第3の手」に注目が集まる
同社は人の手や従来のロボットハンドとも異なるソフトロボットハンドを「第3の手」と呼ぶ。展示会では複数の袋状の製品を一度に把持するデモを披露し、大きな注目を浴びた。引き合いや問い合わせは多く、手塚さんは日々それらに応える。「ロボットハンドのレンタルや実証実験についての要望が多いです。パートナー企業とも協力し、お客さまにとって最適な方法を考えます」と語る。
時には想定していなかった用途を相談されることも。「そういう時に知ったかぶりをせず、困りごとについて詳しくヒアリングします。社内ベンチャーとして発足したばかりで、私自身もまだ勉強中ですが、お客さまから頼られるのはありがたいです」と話す。
ブリヂストンが社内ベンチャーを立ち上げるのは初めて。新規事業として社内からの関心も高い。別の部署の社員から「とても興味深い事業」「応援している」などと声をかけられるという。社内外から注目が集まるなか、ウェブサイトの更新や展示会への出展など情報発信の機会を増やそうと計画している。「たとえ失敗してもそれをマイナスと考えず、挑戦し続けていきたいです」と意気込む。