フランスの産業展が日本に初上陸、多彩なロボット提案に注目集まる
世界40カ国以上から246社・団体が出展
今回のSMSの母体となった「GLOBAL INDUSTRIE(グローバル・インダストリー)」は、毎年3月ごろにフランスのパリとリヨンで交互に開かれる欧州最大級の産業展だ。
このイベントが海を越えて日本に初上陸し、SMSとして3月13日~15日の3日間、愛知県常滑市の展示会場「Aichi Sky Expo(アイチ・スカイ・エキスポ、愛知県国際展示場)」で開催された。
開会式には愛知県の大村秀章知事をはじめ、フィリップ・セトン在日フランス大使やジャン・エリック・パケ欧州連合(EU)大使らも駆け付けた。会期3日間で1万人以上が来場した。
SMSのテーマは「Moving Towards the Future ~未来の移動~」。日本や欧州の製造業を中心に、世界40カ国以上から246社・団体が出展した。
日欧のメーカーやSIerが自動化を提案
会場の一角には「オートメーションゾーン」が設けられ、日本や欧州のロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)などがロボットシステムや自動化ソリューションを提案した。
スイスに本社を構え、フランスにロボットの生産拠点を持つストーブリは、4.5kg可搬の6軸垂直多関節ロボット「TX2-60」やグループ会社が開発したツールチェンジャーで構成されたロボットシステムを展示した。真空吸着ハンドと2爪グリッパーを交互に自動交換し、1台のロボットで多彩な作業を自動化できる点をアピールした。
また、光学レンズメーカーの興和オプトロニクス(名古屋市中区、福嶋昌之社長)は、協働ロボットと自社製のビジョンセンサーなどを組み合わせたパッケージ仕様の移動式パレタイジングシステムを披露。パレット(荷役台)に段ボール箱を積み上げる「パレタイジング」の作業を自動化する。パッケージ仕様で導入しやすい上に、ラインの稼働状況に合わせてシステムを柔軟に移設できるのが特徴だ。
日本製鉄はリアルハプティクスの技術を搭載した遠隔操作ロボットシステムを出展した。リアルハプティクスとはロボットが物体に触れた時の感覚を操作者にフィードバックする力触覚伝送技術で、慶応義塾大学が開発したものだ。
今回展示したのは、手元にある6自由度を持つパラレルリンク機構の「ヘキサロボット」を操作すると三菱電機の6軸垂直多関節ロボットも連動するシステム。グループ会社の日鉄エンジニアリング(東京都品川区、石倭行人社長)が、リアルハプティクス技術を研究するベンチャー企業のモーションリブ(川崎市幸区、溝口貴弘社長)などと共同開発した。垂直多関節ロボットの側にはテニスボールがあり、テニスボールに触れた時の感覚がヘキサロボットを介して操作者にフィードバックされる。日鉄エンジニアリング技術統括センター制御技術部制御開発室の川口秀喜マネジャーは「プラント建設の現場では危険な手作業がまだまだ多く残っており、こうした分野にリアルハプティクスの技術を訴求して自動化に貢献したい」と述べる。
物流の自動化も
SMSでは物流の自動化に焦点を当てたソリューション提案にも注目が集まった。
フランスの物流ロボットベンチャー企業EXOTEC(エグゾテック)の日本法人、EXOTEC NIHON(エグゾテック・ニホン、東京都港区、立脇竜社長)は自動搬送ロボットを使って入出庫作業を自動化する自動倉庫システム「Skypod(スカイポッド)システム」を展示した。
スカイポッドシステムは自動搬送ロボットが保管棚を立体的に走行しながら、商品を保管場所から作業者がいるピッキングステーションまで運ぶ「グッズ・トゥ・パーソン方式」を採用しており、倉庫内作業者の負担を大幅に軽減できる。丹生孝正マーケティングディレクターは「製造業では生産ラインの自動化は進んでいるが、物流関連の業務は人手でやっているケースも多い。今回のSMSを通じ、製造業に『スマート物流』の考え方を訴求したい」と述べる。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)