生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.08.08

[気鋭のロボット研究者vol.29]既存のロボットにとらわれない独自構造【後編】/広島大学 村松久圭助教

村松久圭助教はロボットの動作制御の研究に加えて、3年前に移動型四腕ロボットの研究開発を始めた。村松助教は「これまでの研究とは毛色が違うため、新鮮な気持ちで研究に取り組める」と話す。従来のロボットの構造にとらわれない独特な形状をしており、1台でさまざまな行動ができるのが大きな特徴だ。

一から作り上げたロボット

 村松助教は3年前に独自構造のロボットの研究開発を始めた。「ロボットの制御技術の研究だけでなく、ロボットを一から開発してみたい気持ちが強かった」ときっかけを語る。

 村松助教が開発した移動型四腕ロボットは、車輪での走行とアームでの歩行、物体の把持といった複数の機能を持ち合わせる。形状も従来のロボットとは異なり、本体の前方に付くアームの先端に車輪を備え、後方には2つの小さな車輪と3本のアームを搭載する。

 車輪での走行時には、後方のアームが地面に触れないようにたたみ、歩行時には2本のアームを動物の足のように使う。村松助教は「整地と不整地で移動方法を使い分けできる」という。歩行に使わないアームの先端にフックなどを取り付けることで、物体の把持を可能にする。

  • 後方に付く2本のアームを足のように使って歩行する

  • 3本のアームで立ち上がり、残りのアームで物をつかむこともできる(提供)

遠隔操作の実現を目指す

コックピット型の装置で遠隔操作の方法を模索する

 現在はプログラミングで動作を実行するが、将来的には遠隔操作の実現を目指す。研究室には遠隔操作用のレーシングゲームさながらのコックピットがあるが、今はまだ構想段階のため、ロボットとの接続や遠隔操作の確立が今後の目標だ。「ロボットにできることが多い分、操作が複雑になる。それをコントローラーにどう落とし込むかが課題」と村松助教。
 「遠隔操作ができるようになれば、建設機械や災害救助ロボットなどさまざまな用途で活用できる」と実用化を見据える。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

村松久圭(むらまつ・ひさよし)
2020年3月慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。同年4月日本学術振興会特別研究員。同年7月から現職。日本機械学会会員、日本ロボット学会会員、計測自動制御学会会員、電気学会会員。趣味は映画観賞など。休日にはしまなみ海道をサイクリングすることも。千葉県出身の29歳。

TOP