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2021.03.23

「汎用」AIソフトで言語化しにくい作業を自動化/デンソーウェーブ

デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、中川弘靖社長)は今年3月、最新の人工知能(AI)ソフトウエア「AI模倣学習」を本格発売した。AIが未来に取るべき動作を推論してロボットアームを制御するのが特徴で、粉末の秤量(ひょうりょう、はかりで重さを測ること)などの言語化しにくい作業を自動化するのに役立つ。また、従来のAIソフトは特定の用途で使われるケースが多かったが、AI模倣学習は用途を限定せずに汎用的な商品として提供する。

簡単に一連のプロセスを実行

「本当に簡単に利用できる」と説明する井戸本武士主任

 デンソーウェーブのAI模倣学習は①トレーニングデータの取得②学習③推論――の一連のプロセスをユーザー自身で簡単に実行できるAIソフトだ。同社製のロボットと組み合わせて使う。今年3月に本格発売し、4月1日から出荷する予定だ。

 集めたトレーニングデータをAIに学習させ、推論モデルを生成する。ロボットが置かれた現在の環境や状況を基に、未来に取るべき動作をAIが推論してロボットアームを制御する仕組みだ。
 トレーニングデータを取得する方法は、手元に置いた協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」を操作して模倣させたい動作を再現するマスタースレーブ方式と、プログラム画面から模倣させたい動作を直接プログラミングする方式の2種類がある。マスタースレーブ方式はマスター機であるコボッタを直感的に操作するだけでデータを取得できるため、ロボットの知識がなくても作業がしやすい。

AI模倣学習のプロセス(提供)

 推論モデルの生成や実行は、AI模倣学習の画面上にある「学習」や「実行/終了」のコマンドを押すだけ。FA・ロボット事業部ソリューションビジネス推進部商品企画室の井戸本武士主任は「AIの知識がなくても、本当に簡単に利用できる」と太鼓判を押す。

 また、AI模倣学習では基本的なアルゴリズム(計算方法)に、ビジョンセンサーや力覚センサーなど異なる複数のセンサーの情報を同時に処理する「マルチモーダル方式」を採用する。特定のセンサーの情報だけに依存することなく、ロボットが置かれた状況や環境に合わせ、AI自身がどのセンサーをより重点的に利用するかを判断してロボットアームを制御できるのが特徴だ。

2つの革新的なポイント

「AIもロボットと同じで、主役はお客さまでなければならない」と話す澤田洋祐部長

 AI模倣学習の革新的なポイントは2つある。
 一つは、AIが推論した動作を既存のロボットプログラムの中に組み込めること。プログラムでの制御とAIでの制御を作業内容に応じて使い分けられる。「全ての動作をAIで動かすのではなく、プログラムの中に推論を組み込ませた方がロボットの機能を発揮できることもある。AIを使うべきかプログラムを使うべきか悩む場合でも、ロボットにさせたい作業をよく知っているのはお客さまであり、わが社はコミュニケーションを密接に取り、最適なシステムを提供したい」と澤田洋祐ソリューションビジネス推進部長は語る。

 もう一つは、専用ソフトではなく汎用的なソフトであること。
 ロボット業界向けのAIソフトは従来、画像処理などの特定用途で使われるケースが多かった。これに対し、AI模倣学習は用途を限定しておらず、ユーザーがトレーニングデータを集めて専用化していくものだ。
 澤田部長は「ロボットは汎用品で、お客さまがプログラミングすることで専用化する。AIもロボットと同じで、主役はお客さまでなければならないと考え、汎用的な商品を開発した」と強調する。まずは汎用的なソフトとして提供するが、そこで良い成果が出ればカスタマイズも提案する考えだ。

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