樹脂部品や射出成形用の金型を製造する国盛化学（愛知県小牧市、塩谷陽一社長）は、自社ブランド製品の開発にも力を入れる。その一つが、今回取り上げる多関節ロボット向けのケーブル保護装置「サイルベアフレックス」だ。ロボットの複雑な回転やねじれの動きに滑らかに追従し、動力ケーブルやエアホースを断線などのリスクから保護する。同社は昨年、直径（φ）25mmサイズを追加した。現状は一般的な多関節ロボット向けの販売がメインだが、今後は協働ロボット向けのブラケット（取り付け部材）なども開発してラインアップを拡充する。

　垂直多関節ロボットなどの多関節ロボットには動力ケーブルやエアホースなどのさまざまなケーブル類が必要となる。こうしたケーブル類をむき出しのまま配置するとロボットや周辺装置に引っかかり、断線する恐れがある。
　国盛化学が自社開発したロボット向けのケーブル保護装置「サイルベアフレックス」はケーブル類を断線などのリスクから保護する。
　
　ロボットへの取り付け方法は、専用の「固定ブラケット」でサイルベアフレックスを固定するだけ。たるみが生じる場合は「中間ブラケット」でサイルベアフレックスの中間部を支えれば、ロボットとの干渉を防げる。工具を使わずに手で簡単にカバーを開閉できるためケーブル類を収納しやすく、作業効率も高められる。

　現在は直径の大きさに応じてφ25mm、φ35mm、φ50mmの３種類をラインアップする。全長はφ25mmが50cm、1m、2m、φ35mmとφ50mmがそれぞれ1m、2m、3mの単位で取りそろえており、大小さまざまなロボットに対応する。「ジョイントカバー」という接続部品を使えば、全長の延長が可能だ。

　サイルベアフレックスは、硬質樹脂製のカバーと「スケルトン」と呼ばれる骨格形状の軸から成る「モジュール」を連結させた構造だ。サイルベアフレックスの要の部品であるスケルトンは、剛性や強度が必要なカバーとの接続部分には硬質樹脂を、屈曲や回転動作を担う部分には軟質樹脂を使った。これらをつなぎ目なく連続で成形する独自の二色成形の技術により、サイルベアフレックスはロボットの複雑な動きに滑らかに追従できる。
　また、スケルトンはケーブル類を整列させてきれいに収納するための仕切りの役割も果たす。この他、一つのモジュールごとに左右それぞれ最大15度の角度規制を設けて、ケーブル類への局部的な負荷を軽減し、耐久性の向上も図った。

　企画開発部の面（ほほつき）修部長代理は「スケルトンの形状と構造を作るのに特に苦労した。ロボットの曲げやねじれの動きに対応する可動部とカバーの接続部を構成するため、最終的に『く』の字が連なる骨のような形状になった。また、連続で成形した接続部は、強度を確保しつつ、つなぎ目が分からないように工夫した」と説明する。

　サイルベアフレックスの主要なターゲットはロボットシステムを構築するシステムインテグレーター（SIer、エスアイアー）だ。同社のグループ会社にはSIerのスターテクノ（愛知県岩倉市、塩谷陽一社長）があり、こうしたグループネットワークを生かして日本ロボットシステムインテグレータ協会主催の「新商品・サービス説明会」にスターテクノと共同で参加するなどして、サイルベアフレックスのPRに取り組む。
　企画商品営業部企画商品営業課の石川忠久課長は「最近はサイルベアフレックスの問い合わせが増えている。特に、ロボットの動きに滑らかに追従できる点が評価されている」と話す。