生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2024.06.27

連載

[SI基礎講座vol.9] 生産技術概論⑦

ロボットのシステムインテグレーション(SI)に関する基礎知識を紹介する本連載企画。今回も引き続き「生産技術概論」を取り上げる。今回のテーマはQCDや原価。製造業に限らず、事業活動には欠かせない考え方だ。併せてフロントローディングについても紹介する。

〔今回の講師:中小機構 経営支援アドバイザー 加藤栄作先生〕


――― ――― ――― ――― ――― ―――


【今回のポイント!】
〇QCDはどれも重要
〇原価は「企画」「維持・統制」「低減」で考える
〇フロントローディングで無駄なコストを抑えられる

バランスよく全てを満たす

コストについて考える(SI基礎講座、スライド資料より)

 今回のテーマは「コスト低減の視点を持つ」です。
 製品開発においてはQCD(クオリティー=品質、コスト=原価、デリバリー=納期)のバランスが重要です。どれか一つでも欠けると、企業は競争力を失います。
 品質が悪ければ信用を失い、顧客離れが起きます。コストが合わなければ採算割れで赤字になり、企業が存続できません。納期に遅れれば場合によっては損害賠償を請求される恐れもあります。QCDはどれ一つ欠けてもいけません。

原価管理は3ステップ

 コストを考える際にまず重要なのは、原価管理です。原価管理には、大きく分けて3つのステップがあります。「原価企画」「原価統制・維持」「原価低減」です。
 どういった部品を使い、どういった加工をして、どういった物を作って、いくらで売るか。こういった製品の構想の段階で、原価の8割方は決まってきます。目標原価を設定し、利益をどれだけ確保するかを決め、それを製品や部品などの具体的な物に落とし込みます。

 実際に量産する際にかかる原価は「積上原価」や「実際原価」といわれます。原価は、例えば部品の価格が上昇すればその分上がり、工数が想定と実際で異なった場合も影響が出るため、目標原価との間には差異が生じます。

 実際原価が分かったら、今度はそれを低減していきます。調達する部品を変えることもあれば、内部の生産性を高めることもあるでしょう。想定した利益を確保するため、販売価格を上げる方法もあります。顧客がある程度納得するようであれば販売価格を上げる方法も取れますが、顧客が納得しない場合は顧客離れが起きることもあります。

TOP